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病院の危機管理広報②成功と失敗の分かれ道

CBニュース掲載 2015年3月執筆 

「SNS時代の“病院の危機管理広報”」

2回目 成功と失敗の分かれ道

ネットでの炎上やマスコミからの批判報道はなぜ起こるのでしょうか。理由は必ずあります。2つの事例を解説します。

広報コンサルタント/日本リスクマネジャー&コンサルタント協会理事 石川慶子

批判はなぜ起きるのか

危機管理広報で最近の典型的な失敗例は日本マクドナルドです。今年の1月7日に異物混入についての記者会見を行っていますが、1週間後の14日に、7日の記者会見での表現が不十分であったことを詫びるニュースリリース(http://www.mcdonalds.co.jp/news/2015/index.html)を出しています。要点は3つ。1つ目は、「混入の原因がお客様にあるかのような誤解を与え」「お客様の心情に対する配慮を欠いた発言であり、大きな誤りでした」と不適切な表現へのお詫び。2つ目は、「異物混入の原因と今後の取り組み姿勢を十分にお伝えできませんでした」と、不十分な表現へのお詫び。3つ目は、「米国工場でのマスク着用があったという誤った情報をお伝えしてしまいました」と、誤った情報提供へのお詫び。

遡ってみると、1月7日の会見時にはニュースリリースが出ていません。会見に出席した記者は「仕切りが悪かった。似たような質問ばかりが続いて、だらだらした会見だった」と感想を述べていました。会社のスポークスパーソンは、社長ではなかったことも批判されています。会社側の説明は、社長は出張中と理由をのべていますが、出張に合わせての会見、もしくは会見をするから出張したように見えてしまいます。

異物混入は「公表する、記者会見をやる基準ではなかった」は、その通りかもしれません。しかし、同社の場合には、半年前の前年2014年の7月に中国での期限切れ鶏肉使用の件で注目を浴びたばかり。社長が前に出て説明していたことも人々の頭に残っているため、「またか」という印象を与えてしまいます。マニュアル上は公表基準ではなかったとしても、その時会社が置かれている立場や状況から公表基準を高めにして判断する必要があったと思います。

 

説明は5項目のポイントで

おそらく異物混入の被害者だけを見ていたが故に「その時適切に対応した」ことで済んだと認識したのでしょう。それを知って不快に感じた他の一般消費者を最大のステークホルダーとして洗い出す視点が漏れてしまったといえます。では、どうしたらよかったのでしょうか。前回説明したポジションペーパーを作成し、公式見解のニュースリリースとして公表すべきでした。

ポジションペーパーは、事実関係、経緯と現状説明、原因、再発防止策、見解の5項目が基本形です。この場合は、どのような異物混入とクレームがあったのか、会社はいつ把握し、どうゆう方針で対応したのか、原因はどう分析しているのか、調査中であればどのような体制で調査していて、いつ結果がでるのか、再発防止策はいつ発表するのか。最後の見解は、関係者の処分や責任表明、被害者への哀悼等になります。

内容はできるだけ数字を使うことです。ポジションペーパーは起きたことを客観的に説明する文書です。数字は説明の信ぴょう性や客観性を高めるためには有効です。記者の質問に数字を絡めたものが多い理由もそのためです。

同社は、リーディングカンパニーですから、社会からの期待や注目度は高く、社会的責任は大きいといえます。よくある異物混入は中小企業であれば許されることであっても、リーディングカンパニーとしてはあるべき姿としての模範を示す必要があります。したがって、「異物混入はあってはならない」とし、社会からの信頼を失墜させたことを詫びる姿勢を示すべきでした。

これは医療機関にもいえることです。医療機関の場合には組織の大小を問わず、人の命に関わる仕事です。社会からの信頼や期待が大きいため、それに反する行為があれば批判は大きくなると覚悟を決めてください。

 

第一報のタイミングと表現

少し前になりますが、2013年のローソン冷蔵庫事件は成功事例と言えます。7月14日21時20分に店員が冷蔵庫に入っている写真がネットに掲載されましたが、翌日の15日には、「加盟店従業員の不適切な行為についてのお詫びとお知らせ」と題した文書をトップページに掲載。「お客さまには大変不安・不快な思いをさせてしまいましたことを心より深くお詫び申し上げます。食品を取り扱うものとしてあってはならない行為だと反省しております」「加盟店との契約解約、当該店舗の休業決定」と模範的な表現でした。

24時間以内に見解書を出している点は素早い対応として評価できます。表現も加盟店の行為をお詫びするのではなく、「不安・不快な思いをさせてしまったこと」を詫びている点がプロフェッショナルであると感じます。「あってはならない行為だと反省」は強い自戒を表し、「解約決定、休業決定」も素早い判断をしたことや断固たる姿勢が明確で好感が持てます。ポジションペーパーの書き方も、何が起きたのか、知った後の対応、加盟店の処分、お詫びも記載されています。原因は書かれていませんが、この場合原因はあまり重要ではありません。店員はいたずらで行った可能性が高いからです。迅速な判断と行動、写真を見た人の感情に寄り添い、その気持ちに配慮した表現力は見事であったといえます。

 

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