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外見リスクマネジメント提唱

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マイクの絵 外見リスクマネジメントとは

外見リスクマネジメントは、2015年3月に石川慶子がRMCA(日本リスクマネジャー&コンサルタント協会)のプレスリリース上で提唱した考え方です。「こう見えたい」と自分は思っているのに、相手からはそう見えない状況にあることを外見リスクととらえ、そのギャップを埋めるマネジメントです。日本広報学会にて外見リスクマネジメント研究会としても研究を重ね、マイクロラーニングのプログラムとして提供しています。

外見リスクマネジメント講座プログラム詳細→ https://ishikawakeiko.net/2019/01/15/1362/

「見た目」マネジメントで個人と会社の評判を守る

ネットや動画配信の普及によって、企業の代表者や社員のメディアへの露出は増えつつあります。カメラフレームの中で「どう見えるか」は重要なポイントになります。外見にはより気を使わないといけませんが、服装、ヘアメイク、姿勢や態度など、自分が思い描いている姿と現実の姿にギャップを感じた経験はないでしょうか。第一印象の優位が指摘される昨今、「外見」を疎かにすることは、誤解や非難へとつながる企業の「リスク」になりかねません。そのリスク回避のためには、ギャップを埋めて外見を自分の理想に近づける「外見リスクマネジメント」が必要です。カメラ視点で自分を客観視する訓練をベースに、「思い込み」を排除し、個人の外見リスク感性を磨いていけば、個人だけでなく会社の評判を守ることにもつながります。

外見を構成する要素

まずは「外見とは何か」を考えてみましょう。コミュニケーションの際に影響を与える要素としての考え方なので、ここでは表情、ヘアメイク、姿勢、動き、服装の5要素としています。つまり、生まれつきのものではなく自分が作り上げていく要素です。
私は広報コンサルタントとして経営者や現場担当者にメディアの取材設定をする仕事を日常的にしていますが、「説明の中身は素晴らしいのに、外見と一致していない。もったいない。内容と外見が一致していれば相手から好感持たれる時間をもっと短縮できるのに」と感じることがしばしばありました。取材対応訓練することを広報業界では「メディアトレーニング」と言っていますが、私はもう少し広くとらえており、「カメラ視点で自分を客観視する訓練」と定義しています。このメディアトレーニングの特徴は、取材対応する様子を動画撮影し、自分の姿を見ながら講評するのが特徴です。訓練を受けた方は、自分の姿を見ると発言の中身よりも、「姿勢が悪い」「手の動きが気になる」「何かだらしなく見える」といった見え方についてコメントする方が多いことからも、人は視覚情報に左右されるということです。
外見が他者とのコミュニケーションに与える影響については心理学において活発に行われています。伝わる力は、外見55%、声38%、言葉7%。Visual、Voice、Verbalの3V法則だ(メラビアン)。言語と外見が不一致だと一貫した印象形成がされにくい(ゴフマン)、服と性格が一致していると本人によい作用が生まれる(ソンタークとシュレイター)、人は自分の服装に近い人に好感を抱く(グリーンとグレス)、身なりを整えて清潔感のある魅力的な外見は人からの援助を多く受ける(ハレル)などです。
魅力的な外見、とは何でしょうか。人によって感性は異なりますので、自分の考える魅力的外見を明確にする必要があります。ここでは自分が思い描いている姿と現実の姿にギャップがある場合、それを外見リスクととらえ、ギャップを埋めるプロセスを「外見リスクマネジメント」と考えてください。

楽しくリスク感性を磨けば定着する

なぜ、リスクマネジメントなどといった小難しい言葉を使うのか。イメージコンサルティングと何が違うのか、そのような質問を受けますが、目的が異なります。外見リスクマネジメントの真の目的は、個人のリスク感性を磨くことで組織におけるリスクマネジメントを実現することだからです。
リスクマネジメントは組織的に取り組む必要がありますが、仕組みだけ作っても運用する個人のリスク感性がなければ形骸化してしまいます。かといって、コンプライアンスを声高に叫んで、あれもだめ、これもだめ、これを守れ、では組織は硬直化し、雰囲気は暗くなってしまいます。楽しくリスクマネジメントに取り組める方法はないだろうか、とこの数年ずっと考え続けてきました。そして、個人の外見リスクに焦点を当て、自分を客観視する訓練が積み重なれば、組織的なリスク感性を高めることにつながるのではないか、との考えに至ったのです。
企業は売上が上がれば上がるほど期待の高まりとリスクは増大します。同様に人は社内外での地位が上がれば上がるほど周囲からの期待は高まり、その期待に応えていない外見は信頼を失墜すると考えることができます。外見は個人的に対処すべき課題として議論されがちですが、個人の判断にゆだねることで評判を落とす事例は数多くあります。例えば、2017年に発覚した自動車会社の不祥事では、広報部長と担当の事業部長がノーネクタイ、ストライプシャツ、スーツボタンをしめず、ネームホルダーをつけたまま記者クラブで謝罪したため、その姿を批判する報道がなされました。これは避けられた報道です。言葉だけではなく、外見も含めて謝罪の伝えることの重要性がわかる事例です。
当協会では、2009年に発行されたリスクマネジメントの国際的ガイドラインISO31000の普及促進を目指しています。このISO31000は企業だけではなく、あらゆる組織、家族、個人でもリスクマネジメントを実践せよと訴えています。外見リスクマネジメントもこのフレームワークで進めますので、楽しくリスクマネジメントを学ぶことができるようになっています。
このISO31000のフレームと外見リスクマネジメントを照らし合わせてみましょう。「組織の状況の確定」は、「自分自身の今の姿に向き合う。実際どう見られているのか。客観的な視点を持つこと」。「リスクの特定」「分析」「評価」「対応」は、「外見における課題と魅力はどこか洗い出すこと。一番の課題はどこか。髪型なのか、服装なのか、姿勢なのか。対策の優先順位をどうするか。取り組みやすいのは何か。時間的制限はあるか。どこに間に合わせればよいのか。予算はどこまでかけることができるか。すぐにできる清潔感を演出する手法はなにか?自分でできることは何か。専門家の支援はどこから必要か」。「モニタリング&レビュー」「コミュニケーションおよび協議」は、「取り組んだ結果、周囲に清潔感を与えることになったか、評判を高めたか」。意見を聞きながら調整を重ねて「自分らしい」外見の演出を身につけていくことと当てはめることができます。
リスクマネジメントを効果的にものにするためには、「リスクマネジメントは価値を創造し、保護する。リスクマネジメントは安全性、保安、法律および規則の順守、社会的受容、環境保護、製品品質、統治、世評などの、目的の明確な達成及びパフォーマンスの改善に寄与する」ことが望ましいとされています。リスクマネジメントはコストとして認識されがちですが、「投資」としてとらえよ、というメッセージです。外見リスクマネジメントも同様に、外見を意識することは、その人が持っている価値を守り、創造する、そして会社の評判を守ることにつながるのです。そもそも、リスクのイタリア語源説は「risicare(リスカイア)」であり、「勇気をもって試みる」という意味です。「運命ではなく自ら選択できる」と受け止めると外見リスクにも前向きに取り組めるのではないでしょうか。

自分の魅力と課題を発見する

具体的なステップに入りましょう。全体のステップを紹介しておきます。

1 自分の姿を撮影して客観的に強みと弱みを考える
2 自分がどのように見えればよいかイメージを作る
3 現在の姿とのギャップを自覚する
4 具体的な知識とノウハウを身につける
5 どこから手をつけていくか優先順位を決めて実行する

最初のステップは、自分の写真全身を前、横、後ろ、アップで撮影します。そして、現在の生活と照らし合わせながら外見における自分の強み、弱み、脅威、チャンスを分析します。いわゆるSWOT分析です。例えば、ある40代の女性、「着やせして見える(強み)が、顎が出ている、ジャケットが長くて手が見えない(弱み)。このまま放置すると猫背になる可能性がある(脅威)。子供が大きくなり自分の時間は余裕が出てきた(チャンス)」。ある40代男性の場合、「顔は清潔感がある(強み)が、後ろから見ると右肩が下がっている、ジャケットがやや大きい(弱み)。会食が増えてお腹が出始めている(脅威)、人前で話す機会が増えている(チャンス)」、等です。
次に自分のイメージづくりです。金融機関の方との接触が多い場合には、きちんと感のある姿の方がよいでしょうし、カジュアル服が多いIT企業が取引先に多い場合にはスーツだとやや浮いてしまいます。どのような人達と良好な関係を築きたいのか、自分はどのように思われたいかを明確にします。業界、業種によっても異なりますのでここはじっくり考えたい部分です。研修では、ここでペアセッション(二人一組で討議)を行い、どう見えているのかお互いに感想を述べあうのですが、普段はそのような会話をほとんどしないのでしょうか、新しい自己発見があるようです。ここには狙いがあり、お互いに見え方をフィードバックし合う企業風土を作る土台につなげます。

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