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見た目を正して企業を守る「外見リスクマネジメント」

『月刊総務』20186月号(58日発売) 掲載の元原稿

最終原稿は異なります。

日本リスクマネジャー&コンサルタント協会理事/広報コンサルタント 石川慶子

ネットや動画配信の普及によって、企業の代表者や社員のメディアへの露出は増えつつあります。カメラフレームの中で「どう見えるか」は重要なポイントになります。外見にはより気を使わないといけませんが、服装、ヘアメイク、姿勢や態度など、自分が思い描いている姿と現実の姿にギャップを感じた経験はないでしょうか。第一印象の優位が指摘される昨今、「外見」を疎かにすることは、誤解や非難へとつながる企業の「リスク」になりかねません。そのリスク回避のためには、ギャップを埋めて外見を自分の理想に近づける「外見リスクマネジメント」が必要です。カメラ視点で自分を客観視する訓練をベースに、「思い込み」を排除し、個人の外見リスク感性を磨いていけば、個人だけでなく会社の評判を守ることにもつながります。

第1章 外見リスクマネジメントの必要性

外見を構成する5つの要素

まずは「外見とは何か」を考えてみましょう。コミュニケーションの際に影響を与える要素としての考え方なので、ここでは表情、ヘアメイク、姿勢、動き、服装の5要素としています。つまり、生まれつきのものではなく自分が作り上げていく要素です。

私は広報コンサルタントとして経営者や現場担当者にメディアの取材設定をする仕事を日常的にしていますが、「説明の中身は素晴らしいのに、外見と一致していない。もったいない。内容と外見が一致していれば相手から好感持たれる時間をもっと短縮できるのに」と感じることがしばしばありました。取材対応訓練することを広報業界では「メディアトレーニング」と言っていますが、私はもう少し広くとらえており、「カメラ視点で自分を客観視する訓練」と定義しています。このメディアトレーニングの特徴は、取材対応する様子を動画撮影し、自分の姿を見ながら講評するのが特徴です。訓練を受けた方は、自分の姿を見ると発言の中身よりも、「姿勢が悪い」「手の動きが気になる」「何かだらしなく見える」といった見え方についてコメントする方が多いことからも、人は視覚情報に左右されるということです。

外見が他者とのコミュニケーションに与える影響については心理学において活発に行われています。伝わる力は、外見55%、声38%、言葉7%。Visual、Voice、Verbalの3V法則だ(メラビアン)。言語と外見が不一致だと一貫した印象形成がされにくい(ゴフマン)、服と性格が一致していると本人によい作用が生まれる(ソンタークとシュレイター)、人は自分の服装に近い人に好感を抱く(グリーンとグレス)、身なりを整えて清潔感のある魅力的な外見は人からの援助を多く受ける(ハレル)などです。

魅力的な外見、とは何でしょうか。人によって感性は異なりますので、自分の考える魅力的外見を明確にする必要があります。ここでは自分が思い描いている姿と現実の姿にギャップがある場合、それを外見リスクととらえ、ギャップを埋めるプロセスを「外見リスクマネジメント」と考えてください。

 

なぜ、リスクマネジメントなのか?

なぜ、リスクマネジメントなどといった小難しい言葉を使うのか。イメージコンサルティングと何が違うのか、そのような質問を受けますが、目的が異なります。外見リスクマネジメントの真の目的は、個人のリスク感性を磨くことで組織におけるリスクマネジメントを実現することだからです。

リスクマネジメントは組織的に取り組む必要がありますが、仕組みだけ作っても運用する個人のリスク感性がなければ形骸化してしまいます。かといって、コンプライアンスを声高に叫んで、あれもだめ、これもだめ、これを守れ、では組織は硬直化し、雰囲気は暗くなってしまいます。楽しくリスクマネジメントに取り組める方法はないだろうか、とこの数年ずっと考え続けてきました。そして、個人の外見リスクに焦点を当て、自分を客観視する訓練が積み重なれば、組織的なリスク感性を高めることにつながるのではないか、との考えに至ったのです。

企業は売上が上がれば上がるほど期待の高まりとリスクは増大します。同様に人は社内外での地位が上がれば上がるほど周囲からの期待は高まり、その期待に応えていない外見は信頼を失墜すると考えることができます。外見は個人的に対処すべき課題として議論されがちですが、個人の判断にゆだねることで評判を落とす事例は数多くあります。例えば、2017年に発覚した自動車会社の不祥事では、広報部長と担当の事業部長がノーネクタイ、ストライプシャツ、スーツボタンをしめず、ネームホルダーをつけたまま記者クラブで謝罪したため、その姿を批判する報道がなされました。これは避けられた報道です。言葉だけではなく、外見も含めて謝罪の伝えることの重要性がわかる事例です。

当協会では、2009年に発行されたリスクマネジメントの国際的ガイドラインISO31000の普及促進を目指しています。このISO31000は企業だけではなく、あらゆる組織、家族、個人でもリスクマネジメントを実践せよと訴えています。外見リスクマネジメントもこのフレームワークで進めますので、楽しくリスクマネジメントを学ぶことができるようになっています。

このISO31000のフレームと外見リスクマネジメントを照らし合わせてみましょう。「組織の状況の確定」は、「自分自身の今の姿に向き合う。実際どう見られているのか。客観的な視点を持つこと」。「リスクの特定」「分析」「評価」「対応」は、「外見における課題と魅力はどこか洗い出すこと。一番の課題はどこか。髪型なのか、服装なのか、姿勢なのか。対策の優先順位をどうするか。取り組みやすいのは何か。時間的制限はあるか。どこに間に合わせればよいのか。予算はどこまでかけることができるか。すぐにできる清潔感を演出する手法はなにか?自分でできることは何か。専門家の支援はどこから必要か」。「モニタリング&レビュー」「コミュニケーションおよび協議」は、「取り組んだ結果、周囲に清潔感を与えることになったか、評判を高めたか」。意見を聞きながら調整を重ねて「自分らしい」外見の演出を身につけていくことと当てはめることができます。

リスクマネジメントを効果的にものにするためには、「リスクマネジメントは価値を創造し、保護する。リスクマネジメントは安全性、保安、法律および規則の順守、社会的受容、環境保護、製品品質、統治、世評などの、目的の明確な達成及びパフォーマンスの改善に寄与する」ことが望ましいとされています。リスクマネジメントはコストとして認識されがちですが、「投資」としてとらえよ、というメッセージです。外見リスクマネジメントも同様に、外見を意識することは、その人が持っている価値を守り、創造する、そして会社の評判を守ることにつながるのです。そもそも、リスクのイタリア語源説は「risicare(リスカイア)」であり、「勇気をもって試みる」という意味です。「運命ではなく自ら選択できる」と受け止めると外見リスクにも前向きに取り組めるのではないでしょうか。

 

第2章 外見リスクマネジメントの実践

自分の姿に向き合う

具体的なステップに入りましょう。全体のステップを紹介しておきます。

  • 自分の姿を撮影して客観的に強みと弱みを考える
  • 自分がどのように見えればよいかイメージを作る
  • 現在の姿とのギャップを自覚する
  • 具体的な知識とノウハウを身につける
  • どこから手をつけていくか優先順位を決めて実行する

最初のステップは、自分の写真全身を前、横、後ろ、アップで撮影します。そして、現在の生活と照らし合わせながら外見における自分の強み、弱み、脅威、チャンスを分析します。いわゆるSWOT分析です。例えば、ある40代の女性、「着やせして見える(強み)が、顎が出ている、ジャケットが長くて手が見えない(弱み)。このまま放置すると猫背になる可能性がある(脅威)。子供が大きくなり自分の時間は余裕が出てきた(チャンス)」。ある40代男性の場合、「顔は清潔感がある(強み)が、後ろから見ると右肩が下がっている、ジャケットがやや大きい(弱み)。会食が増えてお腹が出始めている(脅威)、人前で話す機会が増えている(チャンス)」、等です。

次に自分のイメージづくりです。金融機関の方との接触が多い場合には、きちんと感のある姿の方がよいでしょうし、カジュアル服が多いIT企業が取引先に多い場合にはスーツだとやや浮いてしまいます。どのような人達と良好な関係を築きたいのか、自分はどのように思われたいかを明確にします。業界、業種によっても異なりますのでここはじっくり考えたい部分です。研修では、ここでペアセッション(二人一組で討議)を行い、どう見えているのかお互いに感想を述べあうのですが、普段はそのような会話をほとんどしないのでしょうか、新しい自己発見があるようです。ここには狙いがあり、お互いに見え方をフィードバックし合う企業風土を作る土台につなげます。

いよいよ知識獲得ステップです。専門家からの知識を得ることで、「ああ、そうゆうことだったのか」とギャップが明確になり、「これならできそう」と優先順位確定が可能になるからです。なお、今回、外見5要素のうち、誌面の都合で表情とヘアメイクは除外しています。プロフィール撮影では重要な要素ですが別の機会に解説します。ここからは、外見リスクマネジメントのパートナー、モデルウォーキング講師の鷹松香奈子さんとスタイリスト高野いせこさんにも加わっていただき、私や当協会の荒木洋二理事長、相馬清隆事務局長などの実例を交えて解説を進めていきます。

 

歩き方改革

自分の癖を知って歪みを直す

自分を撮影すると「自分の体の癖」がわかります。鷹松さん「人にはそれぞれ癖があります。いつも右手でバックを持つ、左足だけで足を組む。片方だけ使っていると体は歪んできてしまいます。歪むと体のバランスは崩れ、見た目も悪くなり、ひどくなると足を引きずって歩いたり、まっすぐ歩けなくなる方もいます。必ず両方使ってあげてください。バランスは取り戻せます。体は素直なので使った通りになるのです」。

私の場合には、背中を反る癖があり、腰に負担がかかっていました。正しい位置を知ることで意識してカラダを矯正する習慣が身に付き、腹筋を鍛えることで反り腰を改善しました。現在、私が挌闘している癖の矯正は口元。テレビ番組にゲスト出演した録画を見た時に発見しました。左の口元だけが上がって口が歪んでいました。意識してみると食事の際に左だけで噛んでいたのです。それが左の口元が上がってしまう原因と考え、現在は意識して右側で噛むようにした結果、以前よりも歪みが改善しつつあります。

当協会の荒木理事長も1年間かけて歩き方を矯正してきました。最初は、左足で足を組むことができませんでした。右足ばかりで足を組む癖がついてしまっていたからです。歩き方では、足を引きずるようにしていましたが、本人は気づかず。その場で動画を撮影して本人に見せたところ、衝撃を受けていました。「なるほど、本当に歪んでいる。人から足引きづっているけれど怪我したの?と言われていた理由はこれだったのか。全く気づかなかった。これからは足の組み方をバランスよくします」。

<写真説明>

テレビ出演中の筆者。緊張すると左の口元が上がる癖があることを録画で発見

<写真説明>

RMCA荒木洋二理事長、右足ばかりで足を組むため左足ではできなくなっていることに気づいて衝撃を受けた

 

正しい姿勢の作り方は軸の引き上げから

朝起きてから寝るまで私たちはずっと動き続け、歩き続けます。この動作の中で少し意識することで体を矯正できるというのは大きなチャンスがそこにあるともいえませんか。まずは正しい立ち方を体に覚えさせます。

鷹松さん「かかとをつけて立ってみましょう。つらい人は内側の筋肉が弱くなっている証拠。老化現象の始まりです。まずここをしっかり鍛えましょう。自分の軸を知り、正しく立つだけでもヒップアップ効果はありますよ。1分でもいいので毎日やることです。気づいたときに数秒でもいいので意識してやってみましょう。歯磨きの時や電車で立っている時。ほんの少しでいいからやってみて、そして時間をどんどん長くしていくのです。体を引き上げる意識を常に持ってください」。

「数秒ならできそう!」「ヒップアップのためなら頑張る!」といった気持ちが湧き起こりませんか。小さな努力でも続けることが成果につながります。

 

初めの一歩は「伸ばす」意識

大切な初めの一歩はどう進めるのでしょうか。ここから歩き方の本番です。まずは靴を脱ぎ、足の裏全体を使って歩く練習からスタートです。ここでのキーワードは「足の裏全体を使う」こと。大地を踏みしめる感覚というのでしょうか。地に足をつけてあるくのは心地が良いものです。体の軸ができると気持ちの軸も出来てきます。

鷹松さん「前に出す足の先はしっかり上に向けましょう。前の足を下ろしたら今度は重心を前に移動させて前足に乗り切ってしまいます。後ろ足は親指を使ってしっかり押し切ってください」。

この単純そうに思える動きを身につけるのが一苦労。ぐらぐらしてまっすぐ歩けない。重心が前に行かず後ろになってしまう、体に力が入ってしまう、足が伸びきらない。悪戦苦闘していると鷹松講師からもう一声。「では、上半身をひねってみましょう。足を大きくクロスさせてみましょう。最初は大げさに腕を使っても構いません。ひねりが入ると全身を使うので楽に歩けるようになりますよ。日常生活でひねりを使わない人が増えています。このひねりを意識して日常生活に取り入れると体によい刺激を与えることができます。全身運動にもなります。

 

パンプスでかっこよく歩くコツは

 

パンプスを履いてかっこよく歩くのは女性の憧れでもありますが、履きこなすのは案外難しいものです。自分の歩く姿をみると愕然とするかもしれません。脱げてしまっている人、両足の膝が曲がっている人、腰が落ちて恐る恐る歩いている人、など様々です。一体どうしたら、パンプスを履きこなすことができるのでしょうか。

鷹松さん「パンプスはかかとが上がった状態なのでどうしても不安定です。普通の靴と足の裏が地面につかない点が異なります。ポイントは3つあります。まず押し出す足(軸足)は脚全体を使って上半身を前脚へ乗せるように押し出す。ポイント2は、足音を1つにするよう意識する。そのためには出した方の足のつま先を上げる。ポイント3は、前の足が伸びるまで降ろさない、つまり伸びてから着地です」。

ただし、パンプスで気をつけたいのは履きすぎです。そもそもパンプス履いて一日過ごすと足を痛めます。特にハイヒール。パンプスは人前に出る時と決めて持ち歩けばいいのです。同じ靴を終日履くことに比べて、「履き替える」ことで足がリフレッシュするでしょう。今はスポーツ庁もスニーカー出勤を推奨しています。ここぞという場面での演出として使うと仕事にメリハリがつくのではないでしょうか。また、総務の方々はお客様をお迎えする時に足元は必ずチェックされますので気を配りましょう。

 

見た目のよい立ち方、座り方のコツ

 

立ち方や座り方でも印象が変わります。ジャケットのボタンをかけるだけできちんと感が出ますし、片方のつま先を相手に向けるだけでスマートに見えます。目の錯覚を活用したポーズの作り方です。

座り方について、女性は気をつけないと膝が緩んできてしまいます。鷹松さんお勧めの座り方は、片方の脚の重心でもう片方の脚を抑えることで膝を開くリスクを回避するという優れたスキルです。

 

男性スーツの着こなし方基本

 

着物に着こなしマナーがあるようにスーツにも着こなし方のマナーがあります。ある社長が会社を新たな段階に上げたいと思ったときに外見を整えようと決意しました。今の自分にとても自信がありますが、客観的にどう見えるか分析したいと考えました。スタイリスト歴30年以上の経験を持つ一流スタイリスト高野いせこさんと会話したやり取りをご紹介します。

社長は勝負服アルマーニのスーツで自信満々で登場。高野さん「背が高くて、脚も長くてお尻も上がって素晴らしいプロポーションですね。でもスーツのサイズが合っていません。これではせっかくのプロポーションが台無しです。上着の丈は長すぎてせっかくの長い脚が短く見えます。袖もズボンも長すぎでだらしなく見えます。もったいないです。スーツの色は、オンビジネスでは濃紺が最も公式感が高いといえます。黒はマナーとして冠婚葬祭に限ります。シャツの袖は見えた方が清潔感を演出できますから、スーツのサイズとシャツのバランスを合わせることが大切ですよ。アルマーニなど一目でブランドとわかるスーツはビジネスでは避けた方がよいのです。ブランドに頼るのはやめましょう。高いものを身に着ければ自分も高級になると思ったら大間違いです。自分の体のラインに合ったジャストサイズのスーツを着るのが上質なおしゃれです。今はオーダースーツでも手頃な値段で作ることができますから」。

うろたえる社長に、さらに高野さん「ジャケット脱いでみてください。あ、下着が白ですね。下着を着用する場合にはベージュにしてください。そうすれば下着の線が見えませんから。髪型が落ち着きませんね。大人の品格が演出できる髪型にしましょう。色も黒ではなくダークブラウンにした方が大人の男の色気が出ますから」。「大人の男の色気か、なるほど。貴重な体験だった。これだけきっぱり言ってくれる人はいないから、気持ちよかった。いちいちもっともだと感じさせる迫力はあった。知らないことばかりだったので知識も身につき自信につながったよ」と社長も納得。

 

スーツにボタンダウンはマナー違反

当協会の事務局長相馬清隆がチャレンジしたVゾーン改革をご紹介しましょう。最初に実践したのはスーツにボタンダウンシャツを止めたこと。ボタンダウンシャツは、英国の伝統的なポロ競技で使われていたウェアの襟が向かい風で立ち上がり顔にかかるのを防ぐための機能が残ったものです。スポーティなシャツなので重要な商談では避けた方がいいと言えます。相手に失礼になってしまうことがあるからです。皆さん意外と知らないのですが、知っておきたい重要なマナーの1つです。各国首脳のシャツを観察しているともちろんボタンダウンは着用していません。でも、なぜか日本ではボタンダウンシャツは人気があり、定番のようになってしまっていますが、ここは要注意です。

高野さん「ジャケットにボタンダウンは構いません。スーツの場合、襟先が見えてしまうレギュラーカラータイプは間違いではないのですが、顔を大きく見せてしまいます。ワイドカラーやセミワイドカラーはVゾーンに奥行が出て立体感を演出できます」

相馬事務局長「ボタンダウンシャツがスーツにNGなんて知らなかったし、習ったこともない。知らないと公式の場でも着用してしまいますから、とんでもない大恥かきますね」

 

チーフで清潔感演出

 

スタイリストによっていろいろなこだわりを持っていますが、高野さんのこだわりは「チーフ」による清潔感の演出。これは当協会理事たちだけでなく多くの経営者、ビジネスマンに支持されています。高野さんのポリシーは、「チーフはシャツの色に合わせること」。これはシンプルで覚えやすい。「Vゾーン、シャツの袖、胸元の3つの部分で色が統一されるのでバランスがよくなります。清潔感演出にもなります。チーフをネクタイの色に合わせている人が多いですね。決して悪くはないのですが赤いネクタイに合わせて赤いチーフとなると色気が出すぎてしまいビジネスシーンにはふさわしくありません。白のチーフは万能なので、わからないときには白のチーフと覚えておきましょう。入れ方はいろいろありますが、昼間のビジネスタイムでは、四角く折って入れるTVホールドにしておけば間違いありません」。

私自身もチーフの効果は実感しており、2枚チーフを常備しています。夫やクライアントの大切な場面でチーフを胸元に入れてあげるためです。どんなスーツを着ていてもとりあえずチーフをすると清潔感を演出できます。当協会の理事たちも理事会やセミナーでは必ずチーフをするようになりました。

相馬事務局長「出かける前に鏡で自分の姿をチェックするようになったというのが僕自身の一番大きな行動変化ですが、それよりも家族が変わったことの方が大きいかな。妻が気にかけてくれるようになり、靴磨いたわよ、チーフ大丈夫?と声をかけえくれるようになりました」。

 

服装改革 女性

自分だけの黄金比を見つける

女性の場合には男性のスーツほどのルールはありませんが、カラダのラインをきれいに見せるという点は同じです。モデルAさんの事例を解説します。

高野さん「Aさんはジャケットのサイズがあっていないため、袖が長すぎて手が少ししか見えない、重心が下にいってしまうといったことが起こります。ジャケットの丈とスカートの丈を同じにしないことがコツです。どちらかの長さを変えるのです。人によってこのバランスは違います。黄金比と私はいっています。自分の黄金比を見つけてほしいと思います。」。右の図は、ジャケットのサイズが合っています。スカートはタイトにすることでカラダのシルエットはきれいに見えます。ジャケットとスカートの長さもバランスがよくすっきりと見えることが確認できます。

Aさん「なんだかジャケットが長いなあとは思っていましたが、写真で見るとこんな感じなんですね。でも大抵はサイズが大きくて。オーダーするほどでもないし、どうしたらいいのでしょう」。サイズが合わない場合には、購入したお店でお直しを依頼します。取りに行くのが面倒な場合には宅配を活用しましょう。

 

シルエットを見せる方がスマートに見える

 

ある程度の年齢になると、タイトスカートは体のラインが見えてしまうからと避ける傾向がありますが、逆です。私自身もタイトはきついと感じてさけていましたが、スカートが広がっていると横に広がって見えてしまいます。タイト姿の自分を撮影することで初めて人間のシルエットの美しさを発見したように思います。恐れずにタイトスカートに挑戦してほしいと思います。タイトもジャケットとのバランス、自分だけの黄金比を見つければきれいなシルエットになります。

高野さんが警鐘を鳴らしているのは「黒タイツ」。「黒タイツ」は足を強調してしまうのでかえって太く見えてしまうからです。冬は寒いのでタイツに頼りたい気持ちは十分わかります。ただ、人前に出る時にはナチュラルストッキングにした方が好印象であることは確かです。足をきれいに見せたい場合、公式の場、相手を尊重する気持ちを表したい場合にはナチュラルストッキングを心がけたいですね。冬用の温かいストッキングもありますので積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

 

色は3色まで

 

夏はTシャツをビジネスに取り入れたいと思いますが、Tシャツをきれいに着こなすことはできるのでしょうか。

Aさん「カーキ色のTシャツを購入したのですがジーンズには合いますがそれ以外で着こなせますか?ビジネスで取り入れたいのですが」。高野さん「胸元がシワにならないようにすれば、きちんと感を出すことができます。色の組み合わせ方も大切で、カーキ色のTシャツの場合には白ジャケットを合わせるときりりとした感じが出ます。スカートはワインカラーのスカートは案外合います。同系色なので統一感がでるからです。靴をワインカラーにすれば、色はカーキ、ワインカラー、白と3色になります。色は使いすぎず全体で3色に収めるとよいでしょう」。全体で3色まで、はわかりやすいですね。みなさんもコーディネートに生かしましょう。

 

外見リスクマネジメントの世界はいかがでしたでしょうか。トップだけではなく、社員一人ひとりの姿が企業の評判を作る時代です。広報だけでなく、人事、総務も含めて社員の外見リスクマネジメントを実践し、リスク感性を磨く第一歩を踏み出してみませんか。

 

〇執筆者プロフィール

石川慶子:広報コンサルタント/日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 理事

参議院事務局勤務後、劇場映画制作、PR会社勤務を経て2003年に有限会社シンを設立して独立。現在は企業のブランディングやPR戦略、平時・緊急時のメッセージ発信コンサルティングやトップのメディアトレーニングを提供。2015年外見リスクマネジメントを提唱。「マスコミ対応緊急マニュアル 広報活動のプロフェッショナル」(ダイヤモンド社)他、マスメディアでのコメント、出演、寄稿多数。日本広報学会での研究発表多数。

日本広報学会理事、公共コミュニケーション学会理事。

 

〇外見リスクマネジメントパートナー講師

鷹松香奈子:モデルウォーキングインストラクター/合同会社TKPlus代表

1982年からモデルエージェンシーに所属し、パリコレクション・東京コレクションの他、著名ブランドのモデルとして活躍。1992年からウォーキングインストラクターとして、ホテルや百貨店、証券会社、携帯電話会社などで歩き方や立ち居振る舞いなどの研修を手掛ける。27年間、累計1万人以上の指導経験がある。

 

高野いせこ:スタイリスト

2010年理想の上司ランキング1位となったタレントの関根勤氏他、自動車メーカー、銀行等のトップ・管理職へのファッションアドバイスを提供。1986年小堺一機氏で日本メンズファッション協会のベストドレッサー賞受賞。2002年、関根勤氏でベストファーザーイエローリボン賞受賞。スタイリスト歴30年以上。

 

 

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