外見リスクマネジメント連載⑥Vゾーンを立体的に
ビジネスパーソンのための新時代スタイルトレーニング「見た目を整える」第6回 Vゾーンの見せ方(保険毎日新聞 2017年3月2日)
広報コンサルタント/日本リスクマネジャー&コンサルタント協会理事 石川慶子
スーツにボタンダウンはマナー違反
前回は、ネクタイの選び方を解説しました。柄だけでなく、結び方や立体感のある見せ方などまだまだ奥が深いのですが、今回はシャツに焦点を当てることにします。
最近はプロフィール写真や動画メッセージを掲載している社長が増えてきました。顔を見せることは信頼につながりますので、とてもよい傾向だと思います。ただ、ビジネススーツの基本マナーから外れてしまっていたり、相手からどう見えるか全く考慮していないケースが散見されます。スーツにボタンダウン。サイズの合っていないスーツで肩がずれてしまっている姿。赤いネクタイに赤いチーフ。文字だけの世界であれば気にならなかったのに、顔出しをしたとたんに視覚から入る情報で印象が左右されてしまいます。もちろん服装だけでなく、手の動かし方や目線も重要な要素です。
そもそもビジネススーツに着こなしマナーがあることさえ知らない人は実は多いのです。でも考えてみてください。着物には着こなしマナーがあることは誰もが知っていることです。身についているかどうかは別として。ですから着物姿になるときには、「これで合っているかな?」と思いながら着用しませんか。同じようにスーツを着るならば、スーツのマナーを最低限身につけておく必要があるということではないでしょうか。
私は普段取材設定や記者会見の支援をしていますが、メディア慣れされていない方には念入りに事前準備をします。記事はどんな見出しになればいいのかイメージを作り、そのためにどんな手順で何を伝えるか、と段取りを決め、相手の印象に残るようなキーメッセージを決めます。中でも重要なのが取材当日の服装。スーツにボタンダウンの組み合わせはNGですから、と伝えると「え?そうなの?」「何で?みんな着てるよ」という反応。いやいやビジネススーツには着こなしマナーというものがあるのです。
立体感のあるVゾーンを目指せ
ビジネススーツの歴史に詳しいスタイリスト歴30年以上の高野いせこさんは、この間違いをこう説明します。
高野「ボタンダウンシャツは、英国の伝統的なポロ競技で使われていたウェアの襟が向かい風で立ち上がり顔にかかるのを防ぐための機能が残ったものです。スポーティなシャツなので重要な商談では避けた方がいいと言えます。相手に失礼になってしまうことがあるからです。皆さん意外と知らないのですが、知っておきたい重要なマナーの1つです。」
石川「確認ですが、全てのシーンでNGなのではなく、スーツにボタンダウンがNGなのですよね?」
高野「そう、その通り。ジャケットにボタンダウンは構いません。最悪なのは、ボタンダウンシャツを着ていながら襟のボタンを留めていない場合。成り立ちから考えると全く意味がないだけでなく、かえってだらしなくみえてしまいます。デザイナーが外しの演出をすることがありますが、それは高度なテクニックなので一般のビジネスマンは避けてほしいですね」
石川「各国首脳のシャツを観察しているともちろんボタンダウンは着用していません。襟先の見えないタイプがほとんどです。」
高野「襟先が見えてしまうレギュラーカラータイプは間違いではないのですが、顔を大きく見せてしまったり、顔が小さい人は貧相に見えてしまいます。ワイドカラーやセミワイドカラーはVゾーンに奥行が出て立体感を演出できますので、立派に見えるのです。スーツは肩と胸で着る、と言われていますが、そのことを実感できるでしょう」
石川「Vゾーンを語りだすと止まりませんね。奥が深い。今日は10分の1しか書けません(泣)」
さて、今回はモデルとして日本リスクマネジャー&コンサルタント協会事務局長の相馬清隆にご登場いただくことにしました。相馬事務局長が外見リスクマネジメントに取り組んでちょうど一年です。今回の撮影では襟を見比べて「おお、やっぱり立派感が違うね。わかるわかる」と頷いていました。ついでにこの1年間での変化も聞いてみました。
相馬「出かける前に鏡で自分の姿をチェックするようになったというのが僕自身の一番大きな行動変化ですが、それよりも家族が変わったことの方が大きいかな。妻が気にかけてくれるようになり、靴磨いたわよ、チーフ大丈夫?と声をかけてくれるようになったのです」。ほほー、家族円満に一役買っているとは何とも嬉しい報告です。
https://rmcaj.net/_userdata/style/b19_170302p11.pdf