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マスコミ対応のプロが斬る!不倫夫の妻、謝罪の成功例と失敗例

THE PAGE 2016年4月19日執筆

https://newspicks.com/news/1508847/

「マスコミ対応のプロが斬る!不倫夫の妻、謝罪の成功例と失敗例」

日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 理事/広報コンサルタント

石川慶子

 

珍しいことをすると余計に目立つ

乙武洋匡氏が自身の公式サイトで、週刊誌で報道された不倫について2016年3月24日に妻と共に謝罪文を公表しました。私の第一印象は、「珍しいことしてしまった。妻が謝罪するとは今までにない新しいパターン。女性はなかなか共感しづらい。こうゆうのは賛否両論になるから報道が長引くかもしれない」。案の定、その通りになってしまいました。

 

私たち広報プロフェッショナルは、平時は企業のサービスや商品について報道で取り上げてもらおうと、新しい切り口、珍しいことを強調することで話題を作ろうと努力しています。ところが、不祥事になればなるべく報道されない方がよいわけですから、ありふれた情報に見えるにはどうしたらいいかと考えます。よくあることは面白くないので報道で取り上げる価値がないからです。たとえ取り上げたとしても一回で十分と思ってもらえればいい。

 

不倫はどこにでもある日常の風景ですから、目立たないような工夫はそれほど難しくはありません。ありがちは風景とは、夫の不倫に妻は怒るものの、夫が許しを請えば、妻はしぶしぶ許す。ここで妻が一緒に社会に対して「私も責任があるのです」と謝罪をしてしまうと女性達の共感を得ることができません。多くの妻は、不倫をした夫への怒りで気持ちが一杯で、自分の至らなさを認める余裕などないからです。たとえ、本当に妻にも責任があったとしても、そもそも性の問題というトップシークレットについて夫婦の真実は他の人が知る必要もないことです。

 

立派なのに批判されるのはなぜ?

乙武さんの妻、仁美さんが夫のために一緒に謝罪し、引き続きの応援を依頼する姿は素晴らしい、という評価があります。おそらく彼女は本当にとても立派な方なのだろうと思います。しかし、彼女が立派に見えれば見えるほど、「妻があんなに素晴らしいのに。不倫だけならまだしも妻にも謝罪させるといったさらなる負担をかけるとは」と夫の対応への評価を低めてしまいます。つまり、不倫そのものへの批判ではなく、その後の対応への批判というあらたなクライシスを呼び起こすことになるのです。

 

これはプロっぽく言うとクライシスコミュニケーションの失敗となります。クライシスコミュニケーションとは、クライシス発生時のダメージを最小限にするコミュニケーション活動(情報発信、説明責任等)のことで危機管理広報とも言います。ここで失敗すると対応がよくないといった新たな批判が起こるのです。選挙に出る予定があったのであれば、関係する組織の広報担当者がクライシスコミュニケーションの観点からアドバイスできていたらよかったのだろうと思います。

 

しぶしぶ許すのはありがちでよい

では、どうしたらよかったのでしょうか。石井竜也氏はありがちな対応でうまく収束したといえるでしょう。自分のファンと不倫していたことを報道されたことに対し、2016年3月17日、自身の公式サイトで軽率な行動であったと謝罪コメントを公表しました。追いかける報道陣に対しては、妻のマリーザさんと二人で手をつないで登場し、それを撮影させた上で、妻を車に乗せた後、一人で報道陣に一礼し、軽率な行為であったと短くコメント。自分もさっと車に乗って去りました。なかなかうまい。妻と手をつないでいるということは、妻が許していることを十分表現しています。不倫は妻が許していれば他の人がとやかく言うことではありませんから。マリーザさんはしぶしぶ承知して手をつないでいた可能性はありますが、これはいかにもありがちな対応で共感できるのです。「許したくはないけど、これ以上報道されたくないし、子供も傷つくから。手をつなぐくらいは協力するか」と。

 

怒れば共感しやすい

痛快だったのは金子恵美議員が、夫である宮崎謙介元議員に言い放った「恥をかいてきなさい」。週刊誌で不倫を報道された宮崎議員は、当初は否定したり報道陣から逃げるといった対応をしていましたが、2016年2月12日記者会見を行い、議員辞職を表明しました。会見の前、出産直後の妻は、謝罪する夫に対し「やり直す気があるなら恥をかいてきなさい」と喝を入れたとのこと。この言葉には怒りと許しが同居しており、不倫された妻の心情を見事に表しています。

 

「許したくはないけれど、生まれてきた子供の父親でもある。かといって、簡単には許せない。怒りをぶちまけたい。やり直す気があるなら皆の前で恥をかき、責められてきなさい。そうすればもう一度チャンスをあげる」。このような複雑な気持ちは多くの妻たちが共感できる感情ではないでしょうか。マスコミから逃げていた夫宮崎元議員も、この言葉に押されて妻と子を守るためになすべきことは何かと考え、火だるまになる決意が持てたはずです。妻の怒りと許しの気持ちを表現すると共に、夫の決意さえも促す役割を果たした名セリフであったといえるでしょう。

 

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