朝日新聞に、兵庫問題についてのインタビュー記事が掲載されました
朝日新聞にてインタビュー記事が掲載されました。
デジタル版は8月23日
https://www.asahi.com/articles/AST8Q24VGT8QPIHB008M.html
地方版は8月27日に紙面に掲載。

<下記デジタル版の全文>
インタビューは共同著作物との認識から全文を紹介します。
兵庫県の告発問題、なぜ長期化? 「知事は分断収めるメッセージを」
文:添田樹紀記者
兵庫県の内部告発問題などを調べた県の第三者委員会が報告書をまとめてから5カ月が経過した。ただし、斎藤元彦知事は、自身の問題点を指摘する報告書の一部を否定している。第三者委員会の意義や、斎藤知事の対応について、広報コンサルタントの石川慶子さんに聞いた。
――第三者委の意義とは。
一般的に第三者委の役割は、組織内で不祥事などの問題が起こった際に、客観的に原因を分析し、再発防止に役立つ方策を提案することです。
本来は組織内部からそれができればよいのですが、ステークホルダーへの説明責任が生じる以上、客観性を担保する必要があります。社会的影響が大きい事象について第三者委の立ち上げが必要になるケースが多いです。
――斎藤知事の対応をどのように見ていますか。
私は危機管理やリスクマネジメントを専門にしているコンサルタントですので、数々の第三者委の報告書を見てきました。告発文書について調べた県の第三者委は、斎藤知事の告発者を特定するなどの対応を公益通報者保護法違反だと認定しました。
斎藤知事の一番の問題は、告発文書の作成・配布を理由の一つとして告発者を懲戒処分してしまったことです。私は2006年に公益通報者保護法が施行された際、この法律が組織のガバナンスを変えるのに非常に重要な役割を果たすことになると期待しました。告発者の処分に正義はなく、今どき、あり得ません。
――処分したことの問題性をもう少し教えてください。
石川慶子氏=本人提供
組織のリーダーは部下が働きやすい職場を作って組織を活性化させ、成果を上げるのが仕事です。内部告発を理由に処分すれば、部下は萎縮し、不満を抱えます。懲戒処分理由のうち、違法と指摘された告発文書の作成・配布を理由とした部分はなんとしても撤回する必要があります。
ですが、斎藤知事は違法との指摘を認めていません。首長が第三者委の結論を認めないのは珍しいケースです。
――認めない理由で考えられるものはありますか。
背景として考えられるのは、一連の問題が兵庫県という行政機関を舞台に起こった、ということでしょう。
元タレントの中居正広さんが起こした女性とのトラブルに端を発するフジテレビの問題では、スポンサー離れが第三者委の結論を受けた会社の対応に一定の影響を及ぼしたと考えられます。
民間企業が第三者委の指摘を受け入れない場合、株価の下落や上場廃止、製品が売れなくなるといったマイナスの影響が想定されますよね。ですが行政機関は倒産のリスクがまずありません。
また、斎藤知事は法的に問題があると自身が考える指摘にのみ対応している印象を受けます。
第三者委が認定した職員へのパワハラを認めたものの、パワハラに関しては自身に報酬カットなどの処分は科していません。一方で、前総務部長らによる元西播磨県民局長の私的情報漏洩(ろうえい)が第三者委によって認定されると、給料カットの条例改正案を県議会に提出しました。
企業経営者も含めて「法的に問題がなければよい」「証拠がなければよい」という発想になりがちですが、そもそも法律は完璧ではないし、リーダーのあるべき姿とは別の問題です。県の第三者委は、情報漏洩が起こった背景に「知事の指示があった可能性が高い」と指摘しており、知事と県幹部とのコミュニケーション上の問題があったと考えられるのに、知事は指示を否定するばかりでその問題に無関心に見えます。
――斎藤知事の発信をどのように見ますか。
記者会見にも問題があります。斎藤知事の記者会見を見ていると「真摯(しんし)に受け止める」といった定型文が多い。これでは真意が伝わらず、説明責任を果たせているとは言えません。
一方で、昨年3月に告発者を指して「公務員として失格」と言ったり、今年3月に告発者の懲戒処分理由について「わいせつな文書を作成していた」と述べたりしたことをみると、自身に都合の良いことだけを自身の言葉で発信しているように見え、リーダーの資質に問題があると思います。
問題が起きれば様々な批判が起こりますが、それを謙虚に受け入れて根本原因に向き合い、反省して改善していけば事態は収束します。
――この問題を収束するためにはどうすればよいでしょうか。
兵庫県の問題がこれだけ長期間、収束しないのは、歴史に残る出来事だと思います。
ただ以前のように、何か不祥事があれば辞める、という時代は終わったような気がしています。不祥事を追及するマスメディアなどがある一方、「がんばって下さい」という人たちがいる。SNSの発達で人々が感情を共有・共感しやすくなり、メディア不信も相まって、不祥事を起こした人を応援する「エネルギー」が生まれやすくなったのでしょう。
問題の収束には、告発文書の作成・配布を理由とした元県民局長の懲戒処分撤回が最低限必要です。その上で、斎藤知事が一連の問題への包括的な責任として任期中の無報酬や、退職金を受け取らないといった「そこまでやるか」という対応を取り、再発防止策を示した上で、告発問題によって起こった分断を収める強い決意のメッセージを打ち出す方針を立ててはどうでしょうか。
――斎藤知事がメッセージを出す役目にいるということでしょうか。
兵庫県では告発者や県議、マスメディアの記者への「攻撃」がいまも続いています。斎藤知事はこうした分断の根本原因を分析し、攻撃を続けている人たちに向けてメッセージを発するべきです。
回転すしチェーン「スシロー」の店内で撮影された迷惑動画がSNSで拡散された問題で、当事者が特定されて関係者への誹謗(ひぼう)中傷が相次いだことなどを受け、運営会社が関係者への危害となる言動をやめるようメッセージを出したのが好例です。
――今後をどのように見ますか。
問題の収束に向け、今後の県議会の動きにも注目しています。問題が長期化していることについては、県議会の調査特別委員会(百条委員会)や第三者委の調査結果が出ていない段階で斎藤知事の不信任決議を可決した議会の責任は大きい。本来は結論が出そろったタイミングで必要な対応をするべきでした。
県議会やマスコミはこれまでの経緯を踏まえ、まずは県民がこの問題をどう思っているのかをしっかりと把握する必要があります。
その上で再選後の県政運営なども踏まえ、やはり問題があると結論づけるならば、県議会は正々堂々ともう一度、不信任決議することも検討してもよいのではないでしょうか。
兵庫県の内部告発問題とは
職員へのパワハラ問題など7項目を2024年3月に内部告発された斎藤元彦・兵庫県知事らが、県幹部だった元西播磨県民局長(故人)を告発者だと特定し、懲戒処分するなどした一連の問題。
県の第三者調査委員会は今年3月、告発者を特定した県の対応を公益通報者保護法違反と認定。また、告発文書の作成・配布を懲戒処分の理由の一つとしたことも同法違反で無効と指摘した。職員へのパワハラ10件も認定した。
斎藤知事はパワハラを認めた一方、告発文書は「誹謗(ひぼう)中傷性の高い文書」だとして「県の対応は適切だった」「違法性の判定については、最終的には司法の場で判断されるべきとも指摘される」と主張している。
また、元県民局長の私的情報が外部に漏洩(ろうえい)した問題を調べた別の第三者調査委は、斎藤知事の側近だった前総務部長が県議に漏らしたと認定。その背景に「知事の指示があった可能性が高い」と指摘した。斎藤知事は指示を否定している。