Aera dot.でフジテレビ問題についてインタビュー記事
https://dot.asahi.com/articles/-/248578
Aera dot.から28日9時から取材を受け、インタビュー記事として掲載されました。
あまり点数はつけたくありませんでした。本当はは0点と言いたいところでしたが、そこまで言う勇気はさすがになかったのです。インタビューを受けた時点でスポンサーの動きは明確ではありませんでした。戻らなかったという事実からするとやはり0点なのです。2025年2月5日
以下、インタビュー記事は私の発言であり、共同著作物であるとする考え方から全文掲載します。
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フジテレビと親会社フジメディア・ホールディングス(HD)の「やりなおし」記者会見は、27日午後4時から始まり日付をまたいだ午前2時半ごろに終了した。フジ側は質問を希望する全員から質問を受けた。企業の危機管理の専門家は会見を「50点」と評価する。
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「私が知るかぎり最長」だと、企業の危機管理の専門家・石川慶子さんは振り返った。
1月27日行われたフジの記者会見は、約9時間に及んだ川崎協同病院「安楽死」事件の記者会見を超え、約10時間半となった。
前回1月17日の記者会見は参加者が限定され、映像の撮影を認めなかったことなどが強い批判を浴びた。それに対応し、オープンな記者会見をすぐに開いたことは「評価できる」という。
「通常、大手メディアから指名することが多いのですが、今回は最初からフリーランスの記者からの質問が目立ちました。懇意の記者を指名して会見をコントロールする意図はなく、『最後まで、どんな質問にも答える』という姿勢で会見に臨んだことも評価できます」
質問者側が声を荒らげたり、説教を始めたり、大紛糾した10時間超の会見について、SNSでは記者側を批判する声は多かった。フジに同情的な見方も散見された。
にもかかわらず、フジの評価が「50点」と低いのはなぜなのか。
「ひたすら記者からの質問に耐える姿勢を見てもらうために記者会見を開いたわけではないでしょう。彼らは会見で何を伝えたかったのか、最後までメッセージが伝わってきませんでした」
■原因が語られていない
今回の記者会見には視聴者やスポンサー企業、社員からの信頼を取り戻す、という目的があったはずだ。だが、それは「果たせなかった」と石川さんは見る。
その原因として、石川さんは3つのポイントを指摘する。
1つ目は、何が事態をここまで悪化させてしまったのか、「失敗の原因」を率直に説明していないことだという。
「会見を聞いていると、『一生懸命にやってきた』という主張ばかりで、原因についての分析はほとんど語られていません」
石川さんによれば、フジテレビの幹部は「クライシスコミュニケーション」に初動から失敗しており、その分析を行わずに会見に臨んだことが、傷口を広げているという。
クライシスコミュニケーションとは、企業が不祥事や事故を起こしてしまったときの危機管理対応のことだ。
初動の原則は「被害者に向き合う」ことだという。
「会見では、『女性への配慮』『女性のケア』を優先した、と繰り返し語られました。けれども、調査を行わなければ、何が起こったのかすらわからない。そんな状態を向き合っているとは言えません」
中居正広氏がトラブルを起こした相手女性は、フジテレビの社員だった。経営者には対応する法的な義務がある。
「当事者間の認識の違いについて、『コメントできない』という発言がありましたが、これを調査できるのは警察だけです。刑事事件になる可能性があるわけですから、『医師に判断を仰いで対応するのではなく、最初から警察に相談すべきでした。反省しています』と、回答すべきだったと考えます」
トラブルに対応した幹部や社員に危機管理のプロが含まれておらず、法的な側面を考慮して対処されなかったのではないか、と石川さんは推察する。
「女性のケアを最優先する」という理由で、中居氏を登用し続けてきたフジテレビの姿勢には違和感があり、なぜ、そのような判断に至ったのか、質問が繰り返されたが、明快な回答はなかった。
「フジテレビは女性に対して、『人権に対する意識の不足から、十分なケアができなかった』とも言うけれど、結局は女性よりも企業の利益を優先したように映る。だから、うそをついているように見えてしまう」
■記者も見られている
2つ目は再発防止策を積極的に打ち出さなかったことだ。
「再発防止策はクライシスコミュニケーションの重要な柱です。3月末に第三者委員会の報告書を待つことなく、原則『会食を禁止する』とか、打てる手はすぐに打つべきでした」
一方、前述のとおり、質問者側について、SNSでは次のような批判も相次いだ。
<怒号をまわりに聞かせるのもハラスメントって習わないの?>
<感情丸出しカッコ悪いし見ると不快>
<フジテレビが厳しい目で見られているのと同時に、質問する側も同じように見られていることを意識してほしい>
クライシスコミュニケーションの観点からは、記者側の倫理も問われていると、石川さんは言う。
「ときに感情をぶつける質問はアリだと思います。けれども、最初からそうした姿勢では、相手が委縮し、答えが得にくくなることもある。冷静に丁寧に真実に迫る必要があると思います」
そして最後に、この事態を招いた幹部の責任の取り方とタイミングだ。
記者会見が始まる直前に、フジテレビは港浩一社長と嘉納修治会長が一連の問題への対応の責任をとって27日付けで辞任すると発表した。
「このタイミングでの辞任は、『トカゲのしっぽ切り』の感が否めません。本来であれば、経営に強い影響力を持つとされる日枝久取締役相談役を含めて、役員の総退陣を表明すべきだったのではないか」
たとえば、第三者委員会の報告書の提出を期に新しい体制に移行するという方針を打ち出していれば、世間の風向きは大きく変わったのではと石川さんは見る。CM撤退企業も堂々と戻ってこられたのではないか。
次にフジテレビが会見を開くのは、第三者委員会の報告書が出るタイミングだと石川さんは見る。
「第三者委員会が日枝相談役について、どのような勧告をするかもポイントになるでしょう」
「日枝体制」のゆくえを注視するメディアも多い。組織として具体的にどのように対応するかが注目されている。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)