花美術館vol.55に「渚の逢引き」掲載

花美術館vol.55に「渚の逢引き」掲載

 

 

【渚の逢引き】油彩 F12

<評論>嶋田華子

対象に寄り添うような眼差し

自由に筆が躍るような筆触で描かれた黄土色を基調にした背景に、黒と白のコントラストのはっきりした二匹の魚が寄り添う。逢引きというタイトルが目を引くが、文字通り人目を避けて身を寄せ合う様な構図を取っている。もちろん実際に渚でこのような一コマがあったのではなく、雄と雌が対になっているところからも、人目を忍ぶ関係の暗喩であろう。また、人間社会の縮図のように捉えられる一面もあり、既作「絆」や「宙」の作品世界に具体的モチーフが加わり、新たな物語が作者の心の中で展開しているといえよう。背びれから尾にかけての流れるような筆致も手慣れており、陰影豊かに描かれた魚からは、いのちのありようが伝わってくる。作者の対象に寄り添うような眼差しは温かく、印象深い一作となっている。