2021年6月号「花美術館」VOL.74に「富嶽朱映」「創世」掲載

2021年6月号「花美術館」VOL.74に「富嶽朱映」「創世」掲載

<評論> 文/鈴木輝實

これらの作品は、柔らかくもありキビキビとした硬い緊張感をも放ち、幾何学的な形態やトーンのバリエーションは多彩である。彩度の鈍い暗色に鮮やかな色彩は効果的である。高彩度の配置は見る人の視線を誘導させる。両作品とも、観る人の視線は鮮やかな色(赤)に注視され、次に視線は鈍い色の方に異動する。<宙シリーズ「創生」>は左上の赤に釘付けされてから、周囲の細かい部分に異動するし、「富嶽朱映」は富士山の暁に眼を奪われ、次に大地には何があるのだろうか、と想像するだけでも楽しくなる。

 

<宙シリーズ「創生」>。暗闇の中に線や無数の点が散りばめられている。そこには音楽的なリズムが流れている。どの線一つとっても幅が広かったり、あるいは狭かったり、途切れた線や急に変化したカーブがあるかと思えば、真っすぐに伸びた線とそれぞれ性格の違った曲線もある。つまり、1つの形から次の形へ、1つの線や点にも色の変化を持たせることでリズム感を伴いながら視線は次々と移動していくのだ。上方向に下方向に、そして強く弱く、長く短く、その鼓動が繰り返されている。しかし、それは、一見不規則のように見えるようでも、流れるような連続的なリズムも包含している。

 

【宙シリーズ「創生」】油彩

 

「富嶽朱映」。赤と緑は対立する配色である。しかしながら緑色は暗く低彩度であるがためにケバケバしさはない。それよりも逆に緑色は馴染んで温かさが感じられる。山の頂は光が満ちて眩しく輝き画面からは溢れる光が燦々と風のようにながれている。造形力は絵画描写の根源。色彩に蔽われながらもその根底に流れている造形力は秀逸である。地上の闇の世界と空の光の世界には音楽的な諧調が秘められており、音の響きを色と形に託しているとも言えよう。

【富嶽朱映】油彩 45.5×53㎝ 2015年