2021年3月号のArt Giftに「舞い降りた天女」掲載

2021年3月号のArt Giftに「舞い降りた天女」掲載

 

【評論】文・ポール・フロート

羽衣伝説は世界各地にあり、その原型はインドのブルーラブアス王の説話ではないかとの説がある。世界的に共通するのは天から降りてきた天女(白鳥)が水浴びをする姿に見ほれた男が羽衣を隠し、天女が帰れなくなるというもの。その後、天女は男と結ばれ子供を残すが、やがて天に帰ってしまうというのが一般的である。ここに描かれている天女も今まさに水浴びしようとして上半身をはだけた姿をみせているが、古代神話に登場するシャーマンのような妖艶な雰囲気を漂わせている。背景の炎のような赤色のデザイン描写が、天女が発する近寄りがたいオーラのようで、もう一人の主人公である羽衣を隠す男が画面に登場できないのも納得してしまうほどだ。

 

【舞い降りた天女】羽衣、三保の松原より 油彩145.5×112.1㎝