2021年2月号 Art Giftに「朱峯」掲載

2021年2月号 Art Giftに「朱峯」掲載

<評論> 文・中野 中

富士山は絵を描く誰をも虜因にしてしまうようだ。その美しさ、霊性、気高さ、存在感、etc…、に魅入られるのだ。石川さんの朱に映える富士山は、石川さんならではの描写となっている。何よりもその色彩に魅力がある。山容の朱赤、空の黄金色、裾野の緑が、そうと言い切れない微妙な、かつ心理的なイメージを喚起してくる。何色もの塗り重ねたニュアンスに富む彩色が、強さとともに奥深い重厚性を持ち、その存在感を確かにしている。何よりも特徴的なのは、山容と裾野に走る赤条の流れである。これは石川さんが感受した山の気であろう。この気が画面全体にムーヴマンを生んで活気をもたらし、霊性や神秘さえも孕ませた。

 

【富嶽朱映】45.5×53㎝ 2015年