花美術館VOL.68に「舞い降りた天女」「絆」掲載

花美術館VOL.68に「舞い降りた天女」「絆」掲載

<評論>鈴木輝實

抽象的な色調によってイメージを増幅

2つの作品はいずれも色彩の効果を巧みに使い分けている。画面全体は橙色や黄色が支配する色調だが、単なる同系色の濃淡だけではない。そこには、炎や情熱をイメージさせる赤くて暗黒の橙、青みに寄った橙やあるいは透き通るような微妙な赤みで空間のエネルギーまでも緻密に描かれている。曖昧模糊とした抽象的な色調によって、見る側の想像力とイメージを増幅させている。

 

【絆】油彩 S60 2011年

「絆」の全体の色調は、晩秋の黄昏時を思わせる甘美な世界にまとめられ、柔らかな筆致と大気感の創出によって生命の息使いが感じられてくる。見える世界と眼に見えない心の中にある本質的な美の映像を追求しているようだ。音もなく寄せ来る2つのリング。そこには固く結ばれた神秘の世界があある。

 

【響きシリーズ<羽衣>】油彩

「羽衣」。この絵の主役は天女であろう。画面の奥深いところから光を発しているかのようだ。しかもそれぞれの色の塊は画面の枠からはみ出して外への広がりを強調させ、大きく開放的に見せている。観る人の想像力を膨らませながら、神秘や幻想といった要素も包含している。