拙著「なぜあの学校は危機対応を間違えたのか~被害を最小限に抑え、信頼を守るクライシスコミュニケーション」が第15回日本広報学会賞 教育・実践貢献賞受賞を受賞しました。
2020年10月3日 第26回研究発表全国大会で授賞式がありました。日本広報学会理事・審査委員長である小早川護 北海道大学名誉教授から受賞理由が次のように発表されました。
「本著作は、著者が長年の学校との接点を通して獲得した知見と、クライシスコミュニケーションに関する理論的知見を融合させている。学校という現実的な場での、危機管理広報の専門家、コンサルティング、トレーナーとしての筆者の活動を集約し、また、リスクマネジメントのISO規格ISO3100や、「ハインリッヒの法則」なども紹介しながら、いわゆる小・中学校の現場において、クライシスマネジメントは如何にあるべきかを説く優れた実務書である。小中学校の広報危機管理について書かれた本は少なく、大変貴重であり、教育現場へのリスクマネジメント、クライシスマネジメントの普及にも貢献するものとして評価した」
日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 荒木洋二理事長からは次のような推薦文をいただきました。
「学校改革の道標となり得る良書だ。『危機対応』を切り口にしているが、一般的なマニュアルとは一線を画す。企業の手法を当てはめただけの空論でもない。著者は企業の危機管理広報の専門家だ。全国の教員へのリスクマネジメント(以下RM)の研修講師も務め、5,000人の教員と接してきた。同時に2人の子どもを持つ親、PTAに関わる保護者、教育委員会の委員として学校と深く関わってきた。『ハインリッヒの法則』の300の潜在的な異常を『おかしい』『変だな』という言葉に変えるなど、内容は極めて実践的だ。自らも関わった小学校での事例は、映像が浮かぶほどの臨場感に圧倒された。著者の視点は常に冷静だ。批判や非難でなく、暖かい眼差しを学校現場に注いでいる。軸もぶれない。誰を守るのか。なぜ危機が起きたのか。なぜ記者会見を開くのか。何度も本質に立ち返ることを促す。本書はRMの国際的な規格『ISO 31000』にも触れる。教育現場へのRM普及にも資する一冊だ」
<石川慶子の受賞スピーチ>
この度は、教育・実践貢献賞の授与、誠にありがとうございました。
受賞にあたり、日本広報学会での活動を振り返り、感謝の気持ちを伝えたいと思います。
私が広報学会会員になったのは、2002年頃でした。
ちょうど二人目出産を終え、広報の仕事はやめて違うことをしようかと思っていたころです。当時は目の前の仕事をするのが精いっぱいで限界を感じていたからです。
その時、ふと、広報について体系的に学んでみようと考え、広報学会に入ることにしたのです。広報学会では、CSR研究会に入り、故人となられた猪狩誠也先生から広報の歴史についてたくさん教えていただき、とても刺激になりました。会員の皆さんとの討議では、ネガティブ情報の取り扱い、企業姿勢についても考える機会が多くありました。討議を通じて広報の仕事に誇りを持てるようになりました。
同時に危機管理にも関心を持ちました。極めて個人的な体験からですが、臨月で裁判所に行って好きだった会社を訴える局面に立ち「なぜこんなことに、なぜ回避できなかったのか」と思ったのです。そこで、日本リスクマネジャー&コンサルタント協会で72時間学び、シニアリスクコンサルタントの資格を得ました。こうして広報とリスクマネジメント2つの柱で広報プロの道を突き進んできました。
学校の危機管理に関わるのは2005年からです。きっかけは、2004年ダイヤモンド社から出版した拙著「マスコミ対応緊急マニュアルー広報活動のプロフェッショナル」です。これを読んだ教員研修センターの方が「これからの時代、学校は説明責任を果たさなければならない。その方法がここに書かれている」とおっしゃってくださり、2010年まで毎年約1000人、累計約5000人の先生方に実践演習を提供しました。
ダイヤモンド社の本は企業向けでしたので、いつかは学校向けにまとめたいと考えましたが、実現するまで16年もかかってしまいました。その間、コンサルタントとしてだけではなく、保護者として、地域代表PTA会長として、教育委員として学校の危機に関わってきたことを考えると必要な時間だったのかもしれません。
広報学会皆さんとの討議があったからこそ、この度の受賞がかなったと思っています。これまで一緒に議論してくださった皆様に心から感謝申し上げます。これからも実務に役立つ研究を進めていきたいと思います。
この度はありがとうございました。
「なぜあの学校は危機対応を間違えたのか~被害を最小限に抑え、信頼を守るクライシスコミュニケーション」