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中小企業のための広報力アップ作戦

企業実務 2013年7月号掲載

企業実務「中小企業のための広報力アップ」2013年7月号

中小企業のための「広報力」アップ作戦

広報コンサルタント 石川慶子

<広報の役割と重要性>

「広報」を辞書視点でとらえると「お知らせ」になってしまいますが、「組織における広報」となると、違う意味になります。もともと19世紀末から20世紀にかけてアメリカで発展してきた考え方で、「パブリック・リレーションズ」が原語となっています。戦後、日本に輸入される際に「広報」と翻訳されてしまいました。PR会社という言葉を聞いたことがあると思いますが、PRは「Public Relations」の略語になります。パブリック・リレーションズの意味は、組織とその組織を取り巻く人々との良好な関係を構築するための考え方、および行動のあり方のことで、「組織を取り巻く人々から、理解、信頼、好感(あるいは、ファン)の獲得を目的とした継続的な対話活動」となります。また、「パブリック」とは、取引先、消費者、マスコミといった組織外の人達だけではなく、社員とその家族、退職者といった組織内部の人々も含まれます。ネットの時代においては社員との関係構築の方がより重要になってきています。

広告は100%原稿を事前チェックできますが、取材による記事は事前チェックができません。広告できれいごとをアピールしても社内の人間が「あれは嘘だ」とネットに書いてしまえば一夜にして信頼を失います。賞味期限改ざん事件が相次いだことがありましたが、あれは殆ど内部からの通報になります。牛肉偽装をして取引先から告発された雪印食品や、従業員から使い回しを告発された船場吉兆を思い出してください。事件発覚後あっという間に倒産してしまいました。このことからも広告だけでは乗り切れない時代になっているといえるでしょう。広報の本来の意味である「組織を取り巻く人々から、理解、信頼、好感(あるいは、ファン)の獲得を目的とした継続的な対話活動」をしない企業は、社会からの支持を失うのです。

<広報活動の効果とは>

広報活動の代表的なものとしては、新製品、新サービスを記者クラブやネットポータルサイトなどメディアに広く配布・配信する「プレスリリース」、新製品を一般公表に先駆けて発表する「記者発表会」、記者達と意見交換をする「記者懇談会」、取材をお願いする「取材誘致活動」、編集部に新製品を持参してアピールする「メディアキャラバン」、工場見学などへ記者を連れていく「プレスツアー」、テーマパークや新施設を一般公開前に記者達にお披露目する「プレスプレビュー」等、様々あります。これら一連の活動を行うと、自社の製品やサービスが新聞やテレビで紹介されます。このように広告ではなく記事として紹介されることをパブリシティといいます。最近では、マスメディアの記者だけでなく、ブロガーと呼ばれるネット上での発信力のある人たち向けの活動も盛んに行われています。

このパブリシティは、記者が取材して評価した結果の文章であるため、読者からすると広告よりも信頼性が高いと映ります。また、1回の広告ではほとんど効果がないことであっても、1回の記事による露出が、次々に他のメディアに波及して、どんどん広がっていくことがあります。このように積極的な情報発信、相手の意見の耳を傾ける活動を継続し続けることで企業の認知度、信頼感は高まります。ある企業では、「見積りは同額だったが、新聞記事をつけたことで信頼度が高まり受注につながった」といった声もあります。さらに、社員のモチベーションも上がり、生産性が高くなります。「『新聞記事見たよ。お前が就職した会社は規模が小さくて心配していたが、いい仕事しているようだな。頑張れよ』と家族から応援された」といった声が上がります。

<中小企業における従来の広報の問題点>

一番多い誤解が、広報活動を「無料で広告できる」手段として理解していることです。これまで説明してきたように、組織における広報は、パブリック・リレーションズであって「組織を取り巻く人々から、理解、信頼、好感(ファン)の獲得を目的とした継続的な対話活動」ですから、一方的なメッセージ発信である広告とは異なります。また、口コミプロモーションと理解し、すぐに売り上げが上がると考えている人がいますが、これも誤解です。話題作りは、広報活動の一環ですが、話題になればすぐに売り上げが上がるとは限りません。

広報は生活者向けだけではありません。最近ではリクルートのための広報活動が注目を浴びています。世界に通用する技術を持っていながらなかなか優秀な若者を集めることができない企業があったとしましょう。その場合には、若者向けの広報が必要です。来てほしい若者像をイメージし、それらの若者が好む情報をネット上に用意するといった工夫が必要になるでしょう。

ベンチャー企業などは資金集めのための広報が必要になることもあります。そのような場合、業界新聞やベンチャーサイトで、将来有望な企業であることをアピールする記事、例えば社長インタビューの掲載を仕掛けていきます。

広報は単なる広告の格安版でも口コミ起こしの手段でもありません。経営課題解決のためのコミュニケーション活動として位置付けると幅広い視点でさまざまなことを実現していくことができます。

<取材依頼の行い方>

プレスリリースとは、編集部の記者向けに発信する文書で、他で発表していない新しい情報に限ります。既に広告掲載された商品やサービスについては書いてはいけません。今はネットで簡単に配信依頼ができる仕組みができています。ネット配信を使うメリットは、ポータルサイトにそのまま転載されるため、ネット上のネガティブ情報のランクを下げることが期待できる点です。検索結果では、個人の書き込みよりは会社の公式情報が上にランクされるためです。

個別でアプローチする取材依頼の行い方を紹介します。川崎市の自転車メーカーだとしましょう。ターゲットは地元住民。個別の取材依頼をする場合、ターゲットになるのは、全国紙の支局になりますので、各新聞社に電話をして一番近い支局の連絡先を聞きます。支局に電話をして趣旨を話した後、取材依頼書のファックスを流します。地元新聞やコミュニティ誌も電話を入れれば取材してくれる可能性はあります。川崎市であれば神奈川新聞が地元新聞になります。このほか川崎市役所の記者クラブが活用できるか広報課に相談してみてもいいかもしれません。

取材依頼書の内容は、なぜ取材して欲しいのかを説明し、関連する資料は添付とします。社長を取材して欲しい場合には、タイミングが重要です。開発に着手した時点、試供品ができた時、新製品発売時、社長就任のタイミングなど変化の時期を狙い、社長のプロフィールを添付します。

イベントの取材依頼の場合には、イベント開催趣旨と日時を記載します。イベントの場合には社会性があるかどうか、面白い絵が取れるかどうか、が決め手となります。代表的なキーワードは、「社会性」「チャレンジ」「数の多さ」です。社会性であれば、「○○カフェで異文化交流、震災時のネットワーク作りも」。チャレンジであれば、「南極から皆既日食をネットで中継」。数の多さであれば、「8000人のラジオ体操」等です。

新発売の商品取材依頼の場合には、これまでとの違いや他のない面白さ、例えば「溶けないアイスクリーム発売」「男性好みのプリン発売」といった意外性、逆転性のあるものだと関心喚起ができるでしょう。

<ネットの活用>

現在は、ソーシャルメディアが注目されていますが、ネットだけで完結することはないと考えた方がよいでしょう。ソーシャルメディアは気軽な情報発信ではありますが、意外と負担もかかりますし、言葉に気をつけないとすぐに炎上してしまいます。

情報には1つの流れというものがあります。まず、いきなりテレビで紹介されることはまれです。実際に利用した消費者の評判情報がネットに出回り、その情報をヒントに記者が取り上げ、そこから全国紙や週刊誌、テレビに広がり、そこからまたネット上で話題となり、ソーシャルメディアでも再度広がっていくような構図になってきています。

例えば、スイーツ販売店の場合、大手マスコミにスイーツが取り上げられることはまれなので、ブロガーに焦点を絞ります。スイーツ好きのブロガーイベントを開催し、そこで試食した方々にはブログで書いていただけるよう事前条件をつけておきます。ブロガーを集めるには専門のPR会社がありますのでそこを活用します。自社で企画して募集することもできますが、その場合には時間がかかること、広がりに欠けることを承知の上で実施することが必要です。これまではリアルだけの口コミでしたが、ネットも絡めることでスピーディーに波及していきます。

<広報力を鍛えるポイント>

広報力アップに必要なことは情報感度を高めることです。簡単に言えば感動する心を持つこと。そして具体的には、次の10つの視点をいつも意識することです。①新奇性、②突発性、③人間性、④普遍性、⑤社会性、⑥影響性、⑦記録性、⑧著名性、⑨国際性、⑩地域性。つまり、社会的な重要性、教訓、面白さ、意外性、新鮮さ、で情報を眺めてみることです。もっとシンプルに「あー」「へー」「ほー」でもよいでしょう。これは編集者が新人に教える際に伝える情報編集の切り方です。「あー」は突発性や新奇性、「へー」は意外性や面白さ、「ほー」は納得性や教訓性を象徴しています。「あー」「へー」「ほー」と思ったことはすかさずメモを取ることによって、情報感性は高まります。

感性を鍛えるという意味では、「視点」を磨くことをお勧めします。「生活者の目、消費者の目、女性の目、弱者の目、逆転の目、世界を見る目、本質や本性そして裏を見る目、ユ-モアを解する目、芸術文化を理解する目」。これは全国紙記者が語った記事を書く際の視点です。ひとつの視点に拘らず、さまざまな角度から自由自在に見られる柔軟性が必要です。

 

 

 

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