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新人議員のためのメディアトレーニング

「新人議員のためのメディアトレーニング」
議員NAVI 2011年6月号掲載
広報コンサルタント 石川慶子

メディア・トレーニングとは、マスコミや世論の現状を把握し、記者会見やインタビューに対してスムーズに対応できる能力を育成する訓練のことです。記者からのどんな辛辣な質問や誘導尋問にも的確に対応することで、理解・信頼・好感を勝ち取ることを目的としています。平時におけるイメージ向上と危機発生時のイメージ損失を最小限に抑える効果があります。アメリカでは、政治家や企業トップ、広報担当などのスポークスパーソンは必ず受ける訓練として定着しています。日本では上場企業役員クラス、大学、官公庁で認知が広がってきています。具体的な訓練内容は、記者とのやりとりと見え方に重点を置いたチェックリストがありますが、今回は、見え方、好感度を高めるための注意ポイントを中心に解説します。

好かれることは情報戦略の一環

「人に好かれなくても理解されなくても黙って自分の職務を全うすればそれでよい」とする考え方があります。職人であればそれでよいと思いますが、議員という職業の場合には、説明責任を果たすことで理解され、信頼されることが職務そのものではないでしょうか。では、記者から好かれる必要はあるのでしょうか。あります。なぜなら、平時における好感度が高い方がダメージに強いからです。このことは各種データからも実証済みです。例えば、平時の好感度が高いとちょっとした失言でも許される、言葉が足りなくても言外の意味を汲み取って良いように理解しようとしてくれます。特に記者たちから好かれると、プラスイメージの報道記事が多くなる、記者からも情報を得ることができるといったメリットがあります。記者たちから好かれることは情報戦略の一環なのです。

好感をもたれる態度の基本5項目

人間には幸いにも言語でコミュニケーションできるという能力がありますが、正確な言葉を使ってもなかなか相手に思うように気持ちが伝わらない、相手に好印象を与えられなかったと感じることは多いのではないでしょうか。それもそのはずで、心理学の世界では、外見や声の調子の方が相手に対するメッセージ力があるというのが常識になっているのです。メッセージ力の正確な数値は、外見が55%、声の調子が38%、言葉が7%です。これは、1967年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校心理学教授アルバート・メーラビン氏がコミュニケーションに関する研究を行った結果です。外見というのは顔とは限りません。態度、姿勢、視線、表情、ゼスチャー、服装の全てを含みます。それにしても、言葉によるメッセージ力がたったの7%という結果に驚いてしまう方は多いかもしれませんが、ここからわかることは、相手に伝えようと思ったら、言葉だけでなく、全身で伝えることが必要だということです。
「好感をもたれる態度」の基本5項目は、<表情><態度><姿勢><服装><ヘアメイク>です。<表情>は、真剣で明るいまなざしにします。口は引き締めて、歯を見せないようにします。会った途端に白い歯というのはちょっと議員としては軽すぎるからです。<態度>は、息を深くして落ち着いた態度にします。動作をゆっくりとすると落ち着いて見えます。<姿勢>は、背筋を伸ばし、正しい姿勢にします。<服装>は、その場にふさわしい清潔感のある服装にします。どんなに急なインタビューでも清潔感の演出だけは心掛けます。<ヘアメイク>は、服装と同じく清潔感がポイントです。顔をしっかり見せると清潔感は演出できます。女性の場合は、その場にふさわしいメイクをします。
では記者に「好感をもたれる態度」とはどのようなものか、取材対応をベースに詳しく見ていきましょう。

姿勢がよいと自信に溢れているように見える

姿勢がよいとどれだけ得をするかご存知でしょうか。背筋をまっすぐ伸ばしているだけで堂々として見えるため第一印象がとてもよくなります。反対に背中が丸まっていると自信がないように見えるため、信用できない、明快でない、嘘をついているのでは、といった感情を相手に抱かせてしまいます。では、正しい姿勢とは、どのような状態のことなのでしょうか。実際にポーズをとってみましょう。

男性は足を肩巾位(20~30cm)の位置で自然に開きます。女性はかかとを閉じるか少し前後にずらします。かかとはしっかり床につけ上下・左右に動かさないようにしましょう。お腹は引っ込め、アゴを引いて胸を張り、背筋を伸ばします。肩と手の力は抜いてリキまないようにします。手の位置ですが、立っている場合は自然にたらします。座っている場合には前に軽く重ねます。手や指は不必要に動かさず、無駄な遊びをなくします。

肩を一度上にあげて下ろし、胸を張って、お腹を引っ込める、このプロセスを繰り返すことで誰でも確実に姿勢は良くなります。

好感を持たれるアクション

私は10年間映像演出の現場に立ってきました。その後、日本人経営者だけでなく、海外の経営者、ゲームクリエイター、俳優、映画監督、スーパーモデルなど様々な方々へマスコミ取材を設定してきました。その経験に基づいて「記者から好感を持たれるアクション」の基本項目を下記に整理してみました。

自分から声をかける

取材を受ける前から記者の名前はわかっているはずです。そこで、記者が来たら、「○○さんですね」と名前を呼んで声をかけましょう。狙いは記者をリラックスさせるためです。記者は大抵一人で会社に来て取材をするわけですが、うまく相手から聞きたい情報を聞き出せるか、あたかも敵陣に乗り込むような緊張感を持ってきています。そこで、自分の名前を呼ばれれば、ほっと緊張がほぐれ、親近感を持ってもらうことができます。ここで目をしっかりと合わせて、アイコンタクトすることも忘れないようにしましょう。必ず第一印象は良くなります。

あごを引き締める

あごを上げると冷たい感じを相手に与えますので、特別な目的が無い限りあごは引き締めましょう。

腕を組まない

腕を組むのは、相手を受け入れないサインになります。反対に、腕を下ろし、心臓を相手に向けるのは、相手を心から受け入れるサインになります。そこで両手を広げたゼスチャーで語ることができれば、メッセージ力は高まります。記者懇談会といった非公式会見などの場合にはジャケットのボタンを外すとよいでしょう。オープンマインドな態度を感じさせ、信頼感を演出することができるからです。

記者の名前を時々呼ぶ

取材を受けている最中に、時々記者の名前を呼びましょう。メモを取っている手を休めて取材対象者の顔を見上げますので、そこで目が合い、目と目のコミュニケーションができます。社長というのは取材をたくさん受けるため、記者一人一人の名前や顔を覚えていないことが多いのです。記者もそのことはわかっていますが、自分の名前を呼ばれれば、「ああ、自分の名前を覚えてくれたな」と嬉しくなるのです。

腕を伸ばして届く距離に座る

腕を伸ばして相手に触れることができる距離に座りましょう。近づいて場所を共有すること、時間や空間を共有することはとてもコミュニケーションにおいては大切なことです。1時間でも2時間であっても同じ時間と空気を共有することは一つの出会いであり、人生の記憶になります。広い部屋でよそよそしく接するのではなく、思い切って近づきましょう。近づいた分だけコミュニケーションは深くなります。また、対面して座るのではなく、90度の角度で接することができると、より親近感が増します。

握手でエネルギーを送る

握手は確実に記者からの好感度を上げます。選挙活動でも握手は行いますが、取材対応の握手は全く性質が異なりますので注意が必要です。選挙活動中に行う有権者との握手は「私を応援してください」というお願いの意味合いがありますが、記者との握手は、「お願い」ではなく「対等」な立場で行います。ですから、握手も相手の目をまっすぐ見てゆっくり、堂々と行ってください。外国人記者の場合には、握手は必ず行ってください。握手でなくても、相手の目をしっかり見て、エネルギーを送ることができればよいので自分のスタイルを作っていきましょう。

好感を持たれるアクションを自分がどれだけ実行しているか、チェックしてみよう。
□取材前に記者の名前を覚えて、自分から声をかけているか
□あごが上がっていないか
□心臓を相手からそらしたり、腕を組んだりしていないか
□ソファに深く腰掛けて態度が横柄になっていないか
□記者の名前を時々呼びながら、話を進めているか
□腕を伸ばして届く距離で話しをしているか
□最初、もしくは最後に握手をしているか

表情作りのポイントは目、口、額

表情を作るポイントは目、額、口元です。表情を細かく変えると、嘘を言っている、もしくは不安がっていると思われます。心理学の実験では、とくに男性の場合、落ち着きなく唇が動き、額に皺が寄り、眉毛が休まず動いている表情は非主張的だと判断されています(1982年、マクフォールら)。

1960年の米国大統領選挙でケネディに敗れたニクソンの興味深いコメントを紹介しておきましょう。「あなたは有権者からイメージがよくないと思われているが、それはなぜだと思うか」と聞かれた時に、ニクソンは「おそらく理由は3つある。カリフォルニア下院選に出馬した時ジェリー・ボリス相手にかなりあくどい手を使ったり、その後の上院選でもヘレン・ガーガン相手に強引な戦術にでたりしたことが一つ。第二は、下院非米活動委員会の『赤狩り』で積極的な役割を果たしたこと。第3は、人相だ。特に額が狭いことと、髭剃りのあとがいくら剃っても青く残ることがあまり良い印象をあたえていないようですな」(『クロンカイトの世界』)たかが額、されど額、なのです。

目はその人の感性を表す

目の動きから感性の3タイプを分類する考え方があります。アメリカのNLP(神経言語プログラミング)によると、「人間は感覚器官から得た情報をもとに世界を理解している。そして、どの感覚器官の情報を重視するかによって考え方や感じ方が違ってくる」とし、
視覚タイプ、聴覚タイプ、全身感覚タイプに分けています。目の動きを見ると、相手が何を感じながら理解しているかがわかるというのは興味深い研究結果です。コミュニケーションする場合にも大変参考になりますので、紹介しておきます。

話をする際に、眼球が上に動いた場合には、相手は視覚的に感じて過去の記憶をイメージしたり、新しい映像のイメージを作っています。(視覚タイプ)眼球が左右の横に動くと聴覚によって記憶とイメージを感じています。(聴覚タイプ)眼球が下に動いた場合には、全身で受け止めて感じながら記憶とイメージを作っているのです。(全身感覚タイプ)

このことを知っておくと、相手の目の動きから感性タイプを分析することができるようになります。さらに、相手の感性がわかればその感性に合った言葉を使うことで理解を深めてもらうことができます。たとえば、視覚タイプの人には、絵や映像に関わる言葉を使うように心掛けるということです。聴覚タイプには感じのよい声を出すと印象が良くなります。全身感覚タイプには、それこそ前述のように握手をすることが効果的ということです。メディアに当てはめると、テレビのディレクターは視覚タイプが多く、外見にこだわりますので、ゼスチャーを交えて動きのある表現が好まれます。新聞記者は顔を見ずにひたすらメモを取る聴覚タイプが多いので、落ち着いた声で論理的に話す演出がよいでしょう。雑誌などになると視覚も聴覚も合わせたタイプか全身感覚タイプが多いので、バランスが大切です。

左右の眼球の動きは、記憶と想像を表します。右に眼球が動いて場合には、過去の記憶を思い出そうとしているのであり、左に動いている場合には、イメージを作っているということです。つまり、嘘の話をしている場合には、眼球の動きはイメージを作っている左に動くことが多くなるのです。アメリカ映画「交渉人」の中でも目の動きで心理分析をするシーンがありました。犯罪者と交渉するプロの交渉人が相手と会話をする際に、目の動きから相手の嘘を見抜くというシナリオでした。アメリカでは目の動きによる心理分析は進んでいて、映画俳優が演技をする際にも参考にしているようです。目は言葉以上にさまざまなことを語りますので、自分の目の動きや相手の目の動きを注意してみるように心掛けましょう。

口元と歯、笑みについて

一般的に、人は答えにくい質問を受けると笑みを浮かべてしまいがちです。平時ならともなく、事件・事故といった場合、記者からすると「何でこんな時に笑っているんだ」「真剣に質問しているのだから、笑っている場合ではない」と反発が高まります。困った時に自分の表情がどのようになるのかチェックし、笑みを浮かべるようなら意識やトレーニングで必ず直しておくべきです。

安定した視線の作り方

緊張すると目があちこちにいってしまう人は実に多いのです。安定した視線を作るコツをお教えしましょう。記者が質問をしている時など、自分が聴き手の時は相手の顔を見るようにします。話し手にまわる場合にはじっと相手の顔を見るよりは、適度に外し、話の切れ目に相手の目を見るようにします。そうすれば、話の一区切りが終わったことを伝えることができ、同時にこちらの意図が伝わっているかどうかを相手の表情から読み取ることができます。インタビュー対応の場合には、このように適度に視線を外してもよいですが、記者会見の時には、記者席を見る方がよいでしょう。視線を落ち着かせるには、会見席で味方を見つけること。頷いて聞いてくれる記者を見つけてその人に語りかけるようにすれば、落ち着いて記者席を見ながら話をすることができるのです。記者会見に慣れていない場合には、最初から記者席に関係者を座らせ、時々頷くように指示をしておきましょう。これだけでも発表者は随分気持ちを落ち着かせることができるのです。

テレビ視聴者を意識してメッセージを発信したい場合には、記者席ではなく、テレビカメラに目線を合わせて語ります。その方が視聴者にダイレクトにメッセージが伝わります。米国大統領はテレビカメラを使った国民への呼びかけを頻繁に使います。日本の首相はライブ中継で「国民の皆さん!」と呼びかけながら、目線は記者席で下向きである場合が多いため、ちっとも心に響かないのです。

うそは手と足に出る

嘘をつくと、目の動きでわかる、と先ほど説明しましたが、目以外の体の動きからもわかってしまいます。ある心理学者が行った欺瞞を見抜く実験の結果を紹介しておきましょう。人の嘘を見抜くときにどこを手がかりにするのか、さらに結果としてどこを手がかりにした人の正解率が高いのかを実験したところ、手がかりにするものとしては「発言内容」「話し方」と回答した人が最も多かったものの、実際には、手の動きや脚の動きを手がかりにすると回答した人の方の正解率が高かった、という結果です。これは「手の動き」「脚の動き」に、話し手の本心が出やすい、ということを意味します。

プロカメラマンは心理学を勉強しているとは限りませんが、彼らは直感的にそのことを知っているようです。実際、プロカメラマンは動きを捉えます。ペンを手でいじくったり、書類を手で丸めたりするアクション、足などの体の動きにすぐに反応してシャッターを切ったり、カメラをズームアップして映し出すのです。

これに対する対策を考えましょう。不祥事に嘘は許されませんが、国家機密にかかわることであれば、戦略上回答を避けなければならない場合もあります。そのような質問が想定される場合には、インタビューや会見場は、手が隠せる、脚が見えない机にするなど会場設営を工夫すればよいのです。

深い声は信頼感を演出する

自分の声はどんな声だと思いますか?よくわからない人は家族に聞いてみましょう。あるいは自分の声を録音してみます。再生して聞く時には、次の3つの点に留意します。
○複式呼吸で、お腹から声を出しているか
○声が裏返ったりせず、安定しているか
○滑らかに話しているか

思い出してみましょう。声の調子による印象は38%でした。言葉よりも声の調子によるメッセージ力は大きいのです。より効果的な声の演出をするには、次の4つのことを心掛けます。
○重要な言葉は強く言い、重要でない言葉は弱く言う
○調子を変える
○話す速度を変える
○重要なポイントの前後に間をあける

特に、間の使い方は重要です。心理学の実験では、男性の場合には長い間を取ると主張的であるとみなされるという結果が出ています(1980年、ピッチャーとメイクル)。実際、記者の特性として、相手が窮する質問を出すことにハッスルしてしまうところがあります。どのような質問にもスラスラと回答してしまうと返って反感を持たれたり、もっと困らせてやろうという心理が働いてしまうのです。ですから、インタビューや記者会見時には、すぐに回答できる内容の質問であっても、適当に間をとりながら、ゆっくりと考えながら回答しましょう。この演出には水を使うと効果的です。適当な間を作ってくれるからです。

アーウー宰相と呼ばれた大平正芳は、記者会見や国会答弁で「ウー」と言ったままなかなか次の言葉を発せず、間が持たないとさらに「アー」と言って間を作ってようやく言葉が出てきました。しかしながら、記者達がメモを起こしてみると実に理路整然とした内容だったそうです。ポーズとして間を作るのではなく、言葉を考えるための間であることを忘れないでください。

話す速度も大切です。イベント告知の記者発表会など話したいことがたくさんある場合には、ある程度スピードをつけて話をした方がエネルギッシュでイベントへの意気込みを演出することができます。反対に、不祥事会見の場合には、早口で話をすると逆効果になります。また、うっかりと失言をしてしまう危険も伴います。危機的状況においては、ゆっくりとひと言ひと言かみ締めながら話をするようにしましょう。その方が反省の気持ち、謝罪の気持ち、真摯な気持ちをより効果的に伝えることができます。

ゼスチャーは意識的に真似ることから

ゼスチャーの効果を考えてみましょう。直立不動の人の話しよりも、身振り手振りを使った人の方が内容を理解しやすいと思いませんか。ゼスチャーは、言葉の意味の強調、ニュアンスを弱める、という効果があり、効率のよいコミュニケーションを可能にするので、積極的に使っていきましょう。訓練するには、まず意識的にゼスチャーを使うことです。その刺激を受けて、自発的に使えるようになります。それに伴って、不思議と顔の表情も明るくなり、全体的な態度も熱意を帯びてくるようになります。おそらく適度な手足の動きが血行をよくするのでしょう。言葉のインパクトを強めるよいゼスチャーを身に付けていく過程でこれまでの悪い癖を直し、自分が落ち着くゼスチャーを開発していくということです。ゼスチャーやポーズは効果的なコミュニケーションだけでなく、自分のコンディションを整える効果もあります。たとえば、イギリスのメイジャー首相は、回答に窮したときには、背広を脱ぎ、演台から数歩横に動き、片手で台にもたれかかったり、耳たぶに触れたりしていました。これは、自分自身をリラックスさせ、深刻さを和らげるために行っていたとする心理分析があります。メッセージをより印象的に伝えたい場合や自分のコンディションを整えたい時にはゼスチャーを上手く使いましょう。

身だしなみを整える

日本の男性は、残念なことに身だしなみに無頓着な方は大変多いのです。身だしなみというのは高級な服を身につけることではなく、その場に相応しい服を正しく身につけるということです。たとえば、記者会見と記者懇談会の服装について考えてみましょう。記者会見は公式会見ですから、ダークスーツにネクタイ、スーツのボタンは必ずかけておきますが、懇談会は非公式会見なのでグレーのスーツでもよい、ノーネクタイでもよい、スーツのボタンはかけなくてもよい、といったことです。また、アルマーニの服はジゴロ服なので公式の場では避ける、といったマナーの基本知識も必要です。

日本人はスーツをオーバーサイズにしてしまっている方が非常に多いです。オーバーサイズになると、痩せ型の体型の人は痩せ型が余計に目立ち、大きめの顔の人は余計に顔が大きく見えてしまうのです。ビジネススーツではVソーンの演出は重要ポイントです。スーツとシャツのバランスから、ネクタイの太さを調整する位のセンスはほしいです。Vゾーンが地味になってしまった場合には、白のポケットチーフを入れるだけでぐっと品良くなります。シャツの袖がスーツから数センチ出ているだけで、清潔感はずっと高まります。ビジネススーツの基本はしっかりと身につけて記者会見に臨んでください。

テレビ出演の場合に気をつける服装

テレビカメラの前に立つ場合には、さらに別の配慮が必要になります。テレビの走査線にぶつからないように、スーツは、ストライプ、チェック、小さい柄のものは避けるようにします。また、ネクタイは、チェックや柄物を避けなければなりません。スタジオに入る場合は、下から映される場合もありますので、靴下は、深く座って足を組んでもスネが出ないよう長いものにします。靴下の柄物も避けましょう。

オーデコロンは腰から下につける

オーデコロンをぷんぷん匂わせている男性がいますが、品格を下げるので注意してください。部屋中オーデコロンの香りが蔓延していると、「ああ、この人は女性にはだらしないな」という印象を与えてしまうでしょう。オーデコロンは品良く身に付けましょう。女性は首や耳の後ろ、両手首の内側につけますが、男性は同じ場所につけてはいけません。特に脇の下は絶対にいけません。男性の場合、オーデコロンは腰から下につけるのがエチケットです。

オリジナルの演出を考える

日本における歴代首相の中で突出した演出力があったのは中曽根氏と小泉氏です。中曽根氏が演出家の浅利慶太を常にそばにおいて国民にわかりやすい演出に工夫を凝らしていた話は有名です。特に外交で効果を発揮しました。総理大臣として始めて参加した1983年の米国ウィリアムズバークサミットでのこと。会談場から記念撮影場所までの間ブロークン英語で必死にレーガン大統領に話しかけ続け、ついにホスト役レーガン大統領の隣での記念撮影に成功しました。それまでサミットでの撮影は日本の歴代首相は隅っこでしたから、この一枚の写真は、「一流の国際政治家・中曽根康弘」というイメージを国民に強く植え付けることができたといえます。レーガン大統領来日時にも浅利慶太の演出力を使い、二人でちゃんちゃんこをのようなものを着て現れました。テレビ映りを意識してのことです。小泉氏の場合には天性のセンスがあったことに加え、飯島秘書官というネガティブ情報のコントロールに強いスタッフが彼を支えていました。ここで誤解がないように明確にしておきたいことは、好感を持ってもらうということは相手に媚を売ることではありません。自分の信念や思いを言葉だけでなく見え方を意識し全身で伝える必要があるということです。メディア・トレーニングは、インタビュー対応力を身につけるだけでなく、自分が人からどのように見えるのか、伝えたい事は伝わっているのか、あるいは効果的に伝えにはどのようにしたらよいか、を考える場でもあります。伝えたいメッセージの中身、メディアを通じて届けたい相手、起してほしい行動を具体的にイメージしながら、オリジナルの演出を考えてほしい。

メディアトレーニングプログラム例

10:00-10:45 レクチャーⅠ メディアリレーションズ マスコミの特性、関係の作り方、インタビュー対応
11:00-12:00 スタイリング スーツコーティネイト、メガネ・髪型アドバイス
13:00-13:45 模擬インタビュー&講評 1回目 ビデオカメラに収録して改善策を提示
14:00-14:45 模擬インタビュー&講評 2回目 ビデオカメラに収録して改善評価
15:00-15:45 レクチャーⅡ クライシスコミュニケーション 緊急事態発生時の初動、説明責任の果たし方ポイント、公式見解書(ポジションペーパー)の書き方、謝罪の仕方、NGワード、誤報対応、過剰報道対応
16:00-16:45 模擬緊急記者会見&講評 1回目 ビデオカメラに収録。NGワードチェック
17:00-17:45 模擬緊急記者会見&講評 2回目 ビデオカメラに収録して改善評価

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